「エース級」マルティネス、完全復活の兆し。日本球界で成功をつかみとれるか?【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#126】
ファイターズの先発陣で明るい兆しといえば、マルティネス・バーヘイゲンの両外国人投手に目途が立ったことだ。特に昨シーズンは故障で1年間棒に振ったにもかかわらず、契約が切れなかったマルティネスは1年目を彷彿させる投球を見せ始めている。
2020/07/26
日本で野球ができて、お金を稼げるという意味
ところで僕は今シーズンのアメリカ球界の動向に注目していた。ようやく7月末になって大リーグが開幕したが、マイナーリーグのシーズン中止(1901年シーズン以来!)が決まっている。これは何を意味するかというと大量のプレーヤーが仕事にあぶれるのだ。まぁ、大リーグは「プレーヤープール」という枠を設け、有望選手に活躍のチャンスを与えるというが、そこに入れるのはほんのひと握りだ。「プレーヤープール」から漏れた選手がどこへ行くかというと(もちろんトラック運転手やウーバーイーツ等の副業で稼ぐ人も多いだろうが)、アジア球界じゃないかというのが僕の直感だった。
おお、これはマルティネスもバーヘイゲンもうかうかしていられないかなと思ったのだ。もちろん実際問題、復活を1年待ったマルティネスをファイターズが見捨てるはずはないのだが、今シーズンならマイナーリーグから選手獲り放題だ。3A級なら勝てる投手も主軸を任せられる打者もゴロゴロいる。駐米スカウトの交渉力次第でもしかすると、シーズン途中、セ・パの戦力バランスがガラッと変わる補強が実現しないとも限らない。過去、外国人補強のリソースがこんなに極大化したシーズンはないだろう。早い話、ファイターズは(投手枠を減らすなどして)強打者を何人か獲得、「山賊打線」化する(ここは「ビッグバン打線」の再来と記すべきか)ことだって可能性ゼロじゃない。
だからどこの球団がこれに目をつけて動き出すかなぁと思っていたのだ。コロナ禍で2020年シーズンはレギュレーションが変わり、それに合わせた戦術的な変更も要求されている。延長が12回までやるか10回までかはリリーフの使い方も大違いだ。僕は「(ハウスルールのような)2020年シーズンだけの勝ち方」があるんじゃないかと夢想している。で、そのひとつが「米マイナーリーグからのシーズン中の補強策」ではないかと踏んだのだ。
が、実情は異なるようだ。日本政府はコロナ抑止策として外国人の入国制限を実施している。これは非常に手厳しいもので、「日本在住の外国人がいったん日本を離れた際、再入国できない」と評判になっていた。国籍でハネてしまうのだ。例えば国際結婚をして日本に住んでいたフランス国籍の男性が子供を連れて母国を訪れ、再入国しようとすると、子供さんの国籍は日本なので入国できるが、お父さんは入国拒否に遭うというようなものだ。各国の日本大使館からクレームが殺到し、今は多少緩和されて、「永住権」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」または「定住者の在留資格を有する者」といったケースは再入国を認める方向になってきた。
が、「特別の事情をともなった再入国」でなく、新規の入国の場合はハードルが高い。いかにファイターズの打線が弱くても、入国管理上は考慮されないようなのだ。米マイナーリーガーの補強は今のところ現実的ではない。ということはどういうことか。既に入国を果たしている外国人選手は特権的なアドバンテージを有しているのだ。特に3A級の選手は母国の友達とスカイプ等で連絡を取り合い、幸運を感じているはずだ。彼らはアジアの球界で契約を勝ち取り、大金を稼ぐチャンスを得ている。宝くじに当たったのと同じだ。そういう大局から見ると、マルティネス、バーヘイゲンの奮闘もまた違った目で見えてくる。