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国民的スター長嶋が引退 セイバーメトリクスの視点で過去の打撃ベスト10を振り返ろう ~1974年編~

2020/08/05

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Getty Images, DELTA・道作



1974年のセ・リーグ

チーム  試合 勝率 得点 失点 得失点
中日   130 .588 561 537  24
読売   130 .587 589 460  129
ヤクルト 130 .488 453 458  -5
阪神   130 .471 457 498  -41
大洋   130 .444 528 596  -68
広島   130 .429 448 487  -39
 

 
 読売の連続優勝が9でストップしたこと、長嶋の引退で歴史の変わり目を強く意識したシーズンだ。ただ王は前年に続き三冠王を獲得。全項目で優秀な成績を残したが特に158の四球は現代でも残る最多記録となっている。その結果、王の出塁率は1937年秋にタイガースの景浦将が38試合で残した.515を破る.534に達した。

 2位の田淵幸一(阪神)はいよいよ全盛期を迎え、この年はwRAA52.3を記録。王がいない通常のリーグであれば1位で不思議はないレベルに達している。3位以下はこの2選手に大きく離されてしまった。
 
 チーム別に見ると、中日がベスト10に4選手をランクインさせている。この年の中日は読売のV10は止めたものの、得失点差では、読売の129に対し、24とかなり劣っていた。ただ少なくとも攻撃面では優勝にふさわしい陣容になっていたと言える。
 
 4位~6位は似たような打撃結果が並んでいる。このうち5位木俣達彦(中日)と6位松原誠(大洋)は王に次ぐ打率の2位3位でもある。この2人はこの年の4年前にも、2人並んで30本塁打を放ち、王に次ぐ2番手であった。この件に限らず、もし王がいなければ、毎年王が独占していたリーグ表彰タイトル獲得者に、彼らのようなバラエティに富んだ顔ぶれが並んでいたことになる。想像すると面白い。
 
 ベスト10圏外での注目打者は2人。1人は規定打席未到達ながら打率.356とwOBA(※3).459で極めて高い数値を出した長崎慶一(大洋)。もう1人は長打の面で高いパフォーマンスを見せた衣笠祥雄(広島)だ。
 
 このシーズンの本塁打王争いは王と田淵による熾烈なものであったが、夏場までは衣笠を交えた三つ巴で、衣笠の初の本塁打王すら考えられるような状況であった。折り返し点までは衣笠がリードしている場面も多く、24号までに要した試合数は、衣笠の59に対し王は69。しかしその後に重圧で打撃を崩したのか、残り71試合で8本塁打に留まった。前半のハイペースの記憶があったためか、この年の衣笠の本塁打数が最終的に32であったことは当時のシーズン終了後も非常に意外であった。
 
(※1)wRAA:リーグ平均レベル(0)の打者が同じ打席をこなした場合に比べ、その打者がどれだけチームの得点を増やしたかを推定する指標。優れた成績で多くの打席をこなすことで値は大きくなる。
(※2)勝利換算:得点の単位で表されているwRAAをセイバーメトリクスの手法で勝利の単位に換算したもの。1勝に必要な得点数は、10×√(両チームのイニングあたりの得点)で求められる。
(※3)wOBA(weighted On-Base Average):1打席あたりの打撃貢献を総合的に評価する指標。
(※4)平均比:リーグ平均に比べwOBAがどれだけ優れているか、比で表したもの。
 
DELTA・道作
 
DELTA@Deltagraphshttp://deltagraphs.co.jp/
 2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える デルタ・ベースボール・リポート1~3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『1.02 Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』(https://1point02.jp/)も運営する。
 

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