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サッカー選手より勝る野球選手の身体能力。日本人に必要なのは過度な筋トレよりも柔軟性

どんなスポーツにおいても、十分なパフォーマンスを発揮する上で土台となる身体づくりが重要だ。Oriental Physio Academy代表の波田野征美氏はこれまで、さまざまなスポーツ競技のアスリートのカラダを診察してきたが、その経験則から、野球選手のほうがサッカー選手よりも身体能力が高いと感じる一方で、過度な筋トレによって柔軟性を奪い、それが逆にケガやパフォーマンスの低下をもたらすと警鐘を鳴らす。

2014/10/09

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過度な筋トレを避け正しいフォームで、柔軟性を高める

 一般論として、筋力トレーニングを過度にやると、身体にとって正しくない動きを行なってしまいがちだ。筋肥大を目的としたトレーニングは、一般的に8~10RM(Repetition Maximum、挙上できる最大の重量)という負荷量が推奨される。「8回~10回が限界で、11回目は無理」という負荷量だ。実際にやってみればわかるが、これは相当にきつい。こうした負荷でトレーニングを行なっていると、「より高い負荷を持ち上げればいい」という思考に陥り、正しい動き方は二の次になりがちだ。
 
 また、そもそも「固める」というコンセプトでトレーニングしているケースもある。これまで柔軟性を確保することの重要性を述べてきたことからもわかると思うが、当然ながらパフォーマンスアップにはマイナスにしかならない。

 もっとも、身体操作の観点ではサッカー選手よりも比較的優れているプロ野球選手においても、最近では「ああ、これは固めるトレーニングをやってしまったな」と感じる選手も多い。メジャーリーグに挑戦する選手が増えたからか、「筋力をつけて、体重を増やそう」とする選手が多くなった。しかし、そうして筋力をつけた選手の果たしてどれぐらいが思うようなパフォーマンスができているだろうか? 実際に過度な筋トレで体は大きくなったものの、柔軟性が落ちてパフォーマンスアップどころか、ケガにつながった例も多い。
 
 高校時代に150km/hを投げていた選手が、プロ入り後に筋力を増やしたことで球速が上がったケースがどれほどあるだろう? 球速が落ちるか、変わらないか、少し向上したにも関わらず打ち込まれるようになったか、コントロールが悪くなったか、故障が増えたか……そうした悪影響を受けた選手のほうが多いのではないだろうか。
 
 野球の場合、サッカーと違って動き回るわけではないため、体重が多ければ運動エネルギーや位置エネルギーを増やすことはできる。体重が多いほうが、有利になるケースもある。サッカー選手と比べると、野球選手の身体が比較的大きいのはそのためだ。しかし、大事なことは「正しい身体の動きを維持できる」ことであり、「そのためのギリギリの負荷量や可動範囲で」トレーニングを行うことだ。
 
 サッカーにせよ野球にせよ、全身の連動性を把握し、その連動性を維持できる中で筋力トレーニングを行なわなくてはならない。固さはその連動性を阻害するものであり、阻害要因である以上、トレーニングにおいては改善する必要がある。安易に筋力アップのみを志ざし、身体を固めてしまう方向に調整を進めてしまうなら、思うようにパフォーマンスをアップさせることは難しいだろう。

Oriental Physio Academy代表・理学療法士
波田野征美(はたの・まさはる)
体軸ヨガインストラクター。経絡ヨガインストラクター。ホリスティックボディワーカーHB150。自身が自転車競技者としてトレーニングをする中で従来の西洋的なトレーニング方法に疑問を感じる中で、古武術に出会う。西洋と東洋両方を組み合わせた独自の身体観、トレーニング方法はアスリート、スポーツ愛好家、さらには同業者からも高い評価を得ている。

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