王貞治が引退年に30本塁打を記録 セイバーメトリクスの視点で過去の打撃ベスト10を振り返ろう ~1980年編~
2020/08/23
Getty Images, DELTA・道作
1980年のパ・リーグ
チーム 試合 勝率 得点 失点 得失点 前期/後期
近鉄 130 .557 791 694 97 2/1
ロッテ 130 .557 639 588 51 1/3
日本ハム 130 .555 593 513 80 2/2
西武 130 .492 651 634 17 6/4
阪急 130 .464 647 731 -84 4/5
南海 130 .384 623 784 -161 5/6
リーグ1196本塁打はNPB史上最多。二塁打と三塁打を合わせても本塁打に及ばない唯一のシーズンである。また規定打席に達して長打率5割を超えた選手は過去10名を超えたことがなかったが、この年は実に21名を数えた。ちなみに打低シーズンであった1956年のセ・リーグでは最高長打率の田宮謙次郎でさえ.498と5割に届かなった。史上最も打高に偏ったシーズンといえる。
このシーズンに最高のwRAAをマークしたのは、前年も2位にランクインしたチャーリー・マニエル(近鉄)である。wRAA43.1、48本塁打、129打点、長打率.673でそれぞれリーグトップの成績を残した。マニエルを中心とした近鉄打線はシーズン791得点を記録。これは長く続いた130試合制の中では最多記録として残っている。しかし近鉄はこの強力打線を擁しながら、日本シリーズでは前年に続き広島の前に敗退。結局、球団消滅まで日本一を経験することはなかった。
2位と3位を占めたのがロッテのリー兄弟である。兄のレロン・リーが打率.358で首位打者に。弟のレオン・リーも出塁率.404、長打率.638と傑出したところを見せ、ロッテの前期優勝に大きく貢献した。
4位の栗橋茂(近鉄)は最高出塁率.412をマーク。ただしこの時はまだ、出塁率の計算式において、犠飛を分母に加えないルールになっていた。1985年から採用の犠飛を加えた現行ルールの下で計算を行った場合、福本豊(阪急)が.409で最高となる。
ベスト10圏外での注目選手はトニー・ソレイタ(日本ハム)とスティーブ(西武)である。ソレイタは40本塁打をクリアしながら、wRAAランキングでベスト10に入らない3人目の選手となった。また、この年のソレイタは長打54本に対し、単打が53本。長打の総数が単打を上回る歴史的に見ても珍しい記録を残した。
スティーブは、シーズン途中参加ながら1打席あたりの得点貢献を示すwOBA(※3)で.405と実力を発揮。スティーブは前年MLBで152試合に出場したバリバリのメジャーリーガーだ。西武はこれほどの選手をシーズン途中で獲得していたのである。昨今の若い人には想像できないだろうが、当時の西武グループの力と威信、資金力は現代におけるソフトバンクや楽天をも上回っていたかもしれない。西武は他球団に明らかに劣るドアマットチームを引き継いだにもかかわらず、積極的な補強が実り、2年目のこの年に62勝64敗とほぼ五分の勝率を記録。すでに他球団と対等に戦えるレベルのチームになっている。