ノーヒットピッチングの加藤を交代。抑え不在、答えのない投手起用法を考えてみる【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#129】
昨季よりショートスターターを導入しているファイターズ。その象徴ともいえるのが加藤貴之である。その加藤が好投した3日の楽天戦の投手交代のタイミングについて考えてみたい。
2020/09/05
今シーズンの戦い方にショートスターターは適しているのか?
日ハム担当の解説者、評論家諸氏のなかには「ショートスターター否定論者」もいて、その最右翼は岩本勉さんだろう。岩本さんは自分の意見をはっきり言うタイプで、「ハーフスイングは試合時間短縮のためにもアメリカ並みに取るべき」「クオリティスタートはそれだけではクオイティを意味しない。先発は先に点を与えたら負け」等、中継で持論を繰り返している。そのなかでもいちばん熱く語るのが「ショートスターター否定論」だ。ご自身が投手出身だからそこにはこだわりがある。
端的に言えば「投手のためにならない」という考えのようだ。先発はなるべく長いイニングを投げてこそ値打ちがある。長いイニングを投げるにはそのための考え方、スキルがあり、それは実践するなかで初めて身につくものだ。短いイニングだけやってるとそのイメージ力が小さくなってしまう。心身のスタミナも身につかない。
そしてそれはチーム全体にも影響する。投手が納得いってないチームは(特に結果が出ないと)野手も納得いかない。納得いかないのに上が言うからやってる、というチームは主体性が育たず、弱体化する。まぁ、これは岩本氏の言ってることを僕なりに解釈したものだから、違ってる部分もあるかもしれないが、おおむねそんな感じではないか。やらされてる野球は弱い。やらされてる仕事は責任が育たない。
岩本さんは熱血タイプだから言い出すと止まらなくなる。面白いのは実況アナが「あ、またその話が始まった」という感じで流し気味になるんだなぁ。僕はその実況席の雰囲気も含めてわりと気に入ってる。まぁ、これは余談でしかないが…。
で、僕はショートスターターの是非以前の問題として、120試合制、10イニング制、6連戦強行のレギュレーションのなかで、投手の頭数が必要なショートスターターは本当に適した作戦といえるのか?、という疑問を呈したい。僕はどちらかというとオープナー、ショートスターター歓迎の側に立ってきた。新しいことが好きなのだ。見たことないものを見るのが大好きだ。だから12球団でいちばんショートスターター導入に積極的なのが自分のひいき球団だったというのも大変気に入っている。
だけど、コロナ禍の特別レギュレーション、そして現在の投手事情に合っているかといったら難しいところだと思っている。今年はいい投手にはイニングを稼いでもらうべきじゃないだろうか。秋吉亮、金子弌大は2軍落ちして、玉井大翔も疲れが見える。堀瑞輝はずっと不安定だ。宮西尚生だって絶対とはいえない。休ませながら、調整しながら使っていくには、先発(もしくは第2先発)がイニングイーターになる必要がある。1イニング長く投げてくれたら、1人リリーフが休めるのだ。
加藤貴之はあの回で下げてよかったのだろうか? 問いには答えがなく、ファンの思いはいつでも宙づりだ。だけど、問い続けることが野球を愛することでもある。