【データで選出8月月間MVP】ソフトバンク・笠谷が投手トップの貢献を記録。阪神・近本は守備でセ・リーグトップに
2020/09/08
DELTA、Getty Images
攻守両面で貢献した大田が柳田をかわす
評価には(1)セイバーメトリクスの一手法を用いて選手のはたらきを得点換算し、(2)同じ出場機会を「平均的な成績の選手」が担った場合のはたらき(得点)を基準(=0)に置き、どれだけ上積みをつくったかという推定値を算出して行った。「平均的な成績に対して大きな差をつくり」、また「その状態で多くの出場機会を重ねていく」ことで増えていく数値なので、質と量、両面での貢献を見ることとなる。図中の[]で囲んだ項目でグラフが右に伸びているものはリーグ平均以上、左に伸びているものは平均以下だった数値だ。
まず野手からみていく。セ・リーグは近本光司(阪神)が14.1点、パ・リーグは大田泰示(日本ハム)が12.7点と最高の貢献を果たした。大田は開幕直後に不調で苦しんだが、8月は大きく復調。最終試合まで2位以下の柳田悠岐(ソフトバンク)、レオネス・マーティン(ロッテ)と競っていたが、8月最後の試合で4安打を放ち、2人をかわした。
ただ打撃での貢献のみに注目すると柳田、マーティンのほうがはたらきは優れていた。出塁率にはそれほど差がないが、長打率.538だった大田に対して柳田は.696、マーティンは.625と大きく差をつけている。マーティンは8月に4試合連続、柳田も3試合連続で本塁打を放ったことで打撃での貢献に差がついたかたちだ。
守備でチームを何度も救った近本
守備評価には同じイニングを守った平均的な同ポジション選手と比較してどれだけ失点を防いだかを表すUZR(Ultimate Zone Rating)を使用する。しかしUZRは同ポジションの選手との守備を比較する指標であるため、今回のように異なるポジションの選手を比較する際は、ポジション間の補正を行う必要がある。一般的に高い守備力、もしくは独自性のあるスキルを要するポジション(遊撃手や二塁手、捕手など)を守った選手はプラスに補正をかけ、その逆のポジション(一塁手や左翼手など)はマイナスの補正をかけるといった具合だ。この守備位置補正をUZRに加えたものが守備貢献となる。
守備では近本が8.1点で12球団最高の貢献を記録した。8月9日の広島戦では、坂倉将吾(広島)が放った右中間のフライをフェンスに激突しながらジャンピングキャッチ。このプレーをはじめ広大な守備範囲で失点の危機を幾度も救い、高い評価を得ている。近本は打撃貢献だけで見ると、同じセ・リーグの鈴木誠也(広島)や丸佳浩(巨人)に劣っていたが、その差を守備貢献で逆転し、リーグトップの数字を残した。ほかには茂木栄五郎(楽天)、坂本勇人(巨人)らが守備で高い貢献を示している。