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落合博満が中日移籍。ホーナー来日 セイバーメトリクスの視点で過去の打撃ベスト10を振り返ろう ~1987年編~

2020/09/13

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Getty Images, DELTA・道作



1987年のセ・リーグ

チーム  試合 勝率 得点 失点 得失点
読売   130 .639 608 447  161
中日   130 .571 571 492  79
広島   130 .542 549 450  99
ヤクルト 130 .475 553 637  -84
横浜大洋 130 .452 516 601  -85
阪神   130 .331 437 607  -170
 

 
 前述したようにこの年から落合が中日に移籍。これにより落合、ランディ・バース(阪神)と前年度の三冠王が同一リーグに在籍する史上唯一のシーズンになった。結果は落合がリーグをリードすることとなったが、wRAAは46.4。前年は70以上のwRAAを記録していたが、この年は標準的な年のリーグトップが普通にクリアする程度の数字に留まっている。バースも過去2年から比べると期待外れの結果で、この年はむしろベスト10圏外選手のホーナーの方が大きな話題となっていた。

 落合は打撃三部門では無冠ながら.435を記録した出塁率のほか、セイバーメトリクス系の総合打撃指標はそろってリーグ首位を記録した。二塁打はバースの15本に比べて33本を放ってリーグ首位となったが、本塁打が前年に比べ22本減。wRAAの低下にはこれが大きく影響している。
 
 バースを抑えて2位に入ったのはカルロス・ポンセ(横浜大洋)。98打点で打点王を獲得したほか、長打率.616がリーグ1位。.387とリーグトップクラスの打者からするとやや低かった出塁率の改善があればトップもあり得る状況であった。バースは4年連続の長打率1位が途切れ、来日以来初の無冠となっている。
 
 10位にランクインしたランス(広島)も特徴的な活躍であった。ランスはこの年打率.218で39本塁打。1974年クラレンス・ジョーンズ(当時近鉄)以来、史上2人目となる打率最下位での本塁打王を獲得している。さらに二塁打はわずか9本。1ケタ二塁打での本塁打王は、2リーグ制以降では1975年土井正博(当時太平洋)、1984年宇野勝(中日)以来3人目の珍しい記録である。
 
 ベスト10圏外での注目の選手には正田耕三(広島)と篠塚利夫(読売)の2名の首位打者を挙げる。2人はともに打率.333を記録した。さきほどランスを本塁打特化の打者として紹介したが、こちらはアベレージを残すスペシャリストだ。この年はこうした特徴のある打者が活躍できる環境だったようだ。特に正田は2リーグ制史上初、現在まで続く唯一の0本塁打での首位打者であった。またスイッチヒッターでの首位打者獲得も史上初であった。
 
 ほかには何といってもホーナーについて取り上げなければならない。MLBの一流スラッガーが30歳の誕生日よりも前にNPB入り。バブル時代ならではの異常事態に当時の話題は沸騰した。その後のことは散々語られているので省略する。初出場後の数試合の時点では「100本打ったらどうなるのだ」という冗談も冗談には聞こえないほどの鮮烈な活躍であった。シーズンが進んでいくとさすがにそのようなことはなく、腰を痛めての長期欠場や不振もあり、結果は過去のシーズンでも散見される程度のレベルに収まった。しかし、打席数不足とはいえwOBAで首位の落合を上回る.439を記録したのはさすがと言うべきだろう。
 
 翌年、史上初のドーム球場が落成となり、この年で後楽園球場は最後となった。この球場での最後の本塁打を放ったのは読売の吉村禎章。だが吉村が本塁打を放ったときのカウントは4ボール2ストライク。球審の勘違いから起きた珍事であった。
 
(※1)wRAA:リーグ平均レベル(0)の打者が同じ打席をこなした場合に比べ、その打者がどれだけチームの得点を増やしたかを推定する指標。優れた成績で多くの打席をこなすことで値は大きくなる。
(※2)勝利換算:得点の単位で表されているwRAAをセイバーメトリクスの手法で勝利の単位に換算したもの。1勝に必要な得点数は、10×√(両チームのイニングあたりの得点)で求められる。
(※3)wOBA(weighted On-Base Average):1打席あたりの打撃貢献を総合的に評価する指標。
(※4)平均比:リーグ平均に比べwOBAがどれだけ優れているか、比で表したもの。
 
DELTA・道作
 
DELTA@Deltagraphshttp://deltagraphs.co.jp/
 2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える デルタ・ベースボール・リポート1~3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『1.02 Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』(https://1point02.jp/)も運営する。
 

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