「本塁クロスプレー」の“衝突”はもはや捕手の宿命である【里崎智也の里ズバッ! #07】
今季から野球解説者として各方面で活躍する里崎智也氏が、その経験に裏打ちされた自身の「捕手論」を語る好評連載。第7回のテーマは、その激しさゆえに物議を醸すこともしばしばある本塁クロスプレー。フェアかアンフェアか。賛否を二分する問題に当事者として斬りこみます。
2015/07/23
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危険を除去するにはルールを変える以外にない
時に屈強な外国人選手のタックルをまともに食らうこともあるキャッチャーのことを、観ているファンの方は、「割に合わないポジション」と思うかもしれない。
だが、僕自身は現役時代を通じて、自分のポジションを「割に合わない」などと思ったことは一度もない。なぜなら、本塁クロスプレーの1点死守は、打撃で言えばホームランにも値する、キャッチャーにとっての最大の見せ場。怪我をするリスクと引き替えにしてでも背負うに値する、僕らの“宿命”でもあるからだ。
そりゃもちろん、本音を言えば、ガタイのいい外国人選手にまともに突っ込んでこられるのは、誰だって怖いし、僕らにしたって、できることなら避けながらタッチしたい。
けれど、たとえ自軍のキャッチャーが吹っ飛ばされたときに、ベンチの首脳陣が相手チームに猛抗議をしてくれたとしても、「ケガをしたら困るから、ああいう場面では逃げてもいいぞ」なんてことには絶対にならないのが、プロの世界。
そこで僕らが逃げ腰になった瞬間、相手に向けられていたはずの文句の矛先が、たちまちこちらを向くことになる以上、仮に骨折をすることになったとしても果敢にブロックに行って、それまで積みあげてきた信用と信頼をも“死守”するのが、僕らの果たすべき使命というわけだ。
そもそも、現行のルールでは、キャッチャーがホームベースを隠す(=ブロックする)行為はOKとされているのだから、逃げ道のないランナーがそれを退かそうとする行為もまた認められて然るべきではあるはずだ。それでも、時々起こるそうした激しいクロスプレーが「アンフェア」だと言うなら、もはやルールを変える以外に道はない。
つい先日には、NPBが検討している本塁クロスプレーのルール化について、選手会も賛同しているといった報道もあったが、もしそれを明文化したとしても、たとえば「何メートル手前」などと明記するだけでは、その場その場での判断基準が曖昧すぎて揉めるのがオチ。
キャッチャーがベースを隠していけない、という前提とは別に、人工芝の球場ならホーム周辺の黒土に侵入する前にキャッチャーがボールを持っていたら、タックルは禁止。内野が全面土の場合は、高校野球のようなダートサークルを引いて、文字通りの線引きをするといった明確な基準の設定も必要になってくる。
もっとも、そこまでしても上記のケースに該当しない場合などは、やはりタックルが行われることになるだろう。一部の人が眉をひそめる危険なプレーをなくそうと思えば、そのよしあしは別にして、完全禁止にする以外にないのである。