2年目の古田敦也が首位打者を獲得 セイバーメトリクスの視点で過去の打撃ベスト10を振り返ろう ~1991年編~
2020/09/30
Getty Images, DELTA・道作
1991年のパ・リーグ
チーム 試合 勝率 得点 失点 得失点
西武 130 .653 624 439 185
近鉄 130 .616 592 495 97
オリックス 130 .504 554 557 -3
日本ハム 130 .424 463 523 -60
ダイエー 130 .421 557 661 -104
ロッテ 130 .384 484 599 -115
この年は西武がリーグ最多の624点、最少の439失点を記録。得失点差は200点に迫っている。能力の違いを見せつけたシーズンとなった。ベスト10を見るとオレステス・デストラーデの1位を筆頭に2位に秋山幸二、6位に清原和博と3人を送り込んだ。西武所属選手の8人が規定打席に達しているあたり、確固たるレギュラー選手をつくることができていた様子がわかる。
デストラーデはwRAA、1打席あたりの得点貢献を示すwOBA(※3)のほか、39本塁打、92打点でリーグ首位。2位の秋山は長打率.591でリーグをリードした。清原は前年、wRAAなどセイバーメトリクス系の得点貢献指標ですべてリーグ1位としていたが、この年はプロ入り後最悪のシーズンとなっている。
白井一幸(日本ハム)は4本塁打ながら、出塁率.428と出塁に特化した活躍で7位にランクイン。最高出塁率も獲得している。白井は長打がないためストライクゾーンに投げやすいはずの打者だ。そしてチャンスメイカーでもあるため四球を与えると中軸に走者を出してまわすことになる。投手から見て四球を与えたくないタイプだが、打席に対する四球の割合はデストラーデに次ぐリーグ2位であった。これまで2リ―グ制において、最高出塁率を獲得した打者の最も少ない本塁打は1975年小川亨の5本。この年の白井はこれを更新している。
この年は前年から比べ、リーグ総得点が約400点、割合にして12%ほど低下した。打撃で好成績を残すのが難しいシーズンだったようだ。最高長打率が6割を下回ったのはパ・リーグでは13年ぶりのことである。各指標の数字も、本塁打は12%、四球は4%、三振は10%、得点は12%と、いずれも前年よりはっきりとした減少を示した。本塁打や四球など、打者にとってプラスのはたらきとなる指標が減少するのはわかるが、マイナスのはたらきとなる三振も同時に減少していることは興味深い。本来ならば相反する動きを見せるのが自然なように思える。安打数は前年からほとんど変わっていないところから考えるに、浅いカウントで打って出なければならないバイアスのかかった打者が多かったのかもしれない。
またこの年は史上2人目となるキャリア通算1打席のみの出場で1本塁打を放った選手が登場した年だ。打ったのはオリックスのドン・シュルジー投手。延長戦で野手を使い切っていたため、投手が打席に立ち起こった珍事だが、実はシュルジーには3A時代にも1本塁打を放った経験があった。MLB、NPB、マイナーすべてを通じて記録したのは2安打のみで、長いプロ生活ながら本塁打以外の安打は打っていない。
ベスト10圏外の注目選手にはタイトルホルダーの2人、ジム・トレーバー(近鉄)と平井光親(ロッテ)を挙げる。トレーバーは.318と低出塁率ながら走者を還す役割に特化して92打点で打点王を獲得。平井は逆に.394と低長打率ながら、フィールド上に飛ぶ打球が安打になる確率を表すBABIP(※5)が高く、打率.314で首位打者を獲得。一芸に特化したスペシャリストが活躍しやすい環境であった。