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天才・前田智徳、大砲・江藤智が上位に セイバーメトリクスの視点で過去の打撃ベスト10を振り返ろう ~1993年編~

2020/10/06

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Getty Images, DELTA・道作



1993年のパ・リーグ

チーム   試合 勝率 得点 失点 得失点
西武    130 .583 512 421  91
日本ハム  130 .577 558 478  80
オリックス 130 .556 516 471  45
近鉄    130 .528 562 520  42
ロッテ   130 .398 487 583  -96
ダイエー  130 .360 434 596  -162
 

 
 この年は80年代から黄金時代が続いてきた西武の戦力に陰りが出てきた年である。前年オフにオレステス・デストラーデが退団したチームは、得点がリーグ4位と攻撃面で苦戦。投手力の高さで優勝は勝ち取ったものの、シーズン74勝と傑出はしておらず、ほかのチームにもチャンスがある状態になっている。

 wRAAランキングでは石井浩郎(近鉄)が1位となった。石井は打撃三冠や出塁率・長打率で無冠ながら、wRAA及び1打席あたりの得点貢献を示すwOBA(※3)でともに1位。これは1978年のレロン・リー(当時ロッテ)以来のことである。
 
 ただ石井の値が飛び抜けていたわけではない。上位は好成績の選手が密集状態になっており、1位石井と2位メル・ホール(ロッテ)の差はわずか1.7点であった。また上位5人の中に打撃三冠タイトル獲得者がいない珍しいシーズンでもある。ほかにも最高出塁率となった辻発彦(西武)の出塁率が4割未満に。これは1976年以来17年ぶりのことであった。
 
 西武は4位清原和博、5位石毛宏典、9位秋山幸二、10位に辻と、4人をランクインさせてベスト10の中では面目は保ったが、清原の長打率が石毛を下回るなど、チームとして得点を奪う形もかなり変質しているようだ。この年の西武はチーム出塁率が.338、長打率が.395で得点は512点であった。だが出塁率、長打率ともに西武より悪い日本ハムとオリックスがそれぞれ558点、516点を挙げている。ほかにOPS(出塁率+長打率)がほぼ同じ近鉄と比べても得点効率は圧倒的に悪い。西武はリーグで図抜けて多い142犠打を記録していた。バントを多用しすぎる弊害が表れたかたちだ。
 
 ラルフ・ブライアント(近鉄)は.549で最高長打率、42本で本塁打王、107打点で打点王を記録。しかし出塁率が.320とリーグ平均を下回ったため、総合で6位に留まっている。四球は少ないが長打力で得点貢献した、ある意味「らしい」活躍である。
 
 ベスト10圏外の選手はタイゲイニー(オリックス)。374打席と、惜しくも規定には届かなかったがwOBA、出塁率、長打率はすべて規定到達組のトップを上回った。この年、打席に迎えたとき最も恐ろしい打者はタイゲイニーだったといえるかもしれない。積み上げたwRAA30.6もリーグ3位。翌年の不振が嘘のような活躍であった。

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