ミラクル星稜から1年 「後輩の夢が広がるように」岩下大輝が踏み出すプロの第一歩【マリーンズ浦和ファーム通信#2】
一軍での活躍を夢見て、日々二軍の浦和球場で汗を流す若鴎たちを、マリーンズ広報がクローズアップする連載『マリーンズ浦和ファーム通信』。第2回目は、昨年の全国高校野球選手権大会石川大会決勝で奇跡の大逆転を起こし、プロへの道を開いた星稜高出身のルーキー岩下大輝投手だ。
2015/07/27
画像提供:株式会社千葉ロッテマリーンズ
1年前の大逆転が人生の分岐点
「あれから1年か。早いなあ」
ロッテ二軍が本拠地を置く浦和球場の炎天下のグラウンドで走り込みを終えた岩下大輝投手はポツリと口にした。
1年前の2014年7月27日。岩下は高校3年生だった。その日、石川県立野球場にて行われた全国高校野球選手権大会石川大会決勝。
彼が所属していた星稜高校は、0-8で迎えた9回に一挙、9点を奪い、9-8で小松大谷高校に勝利して2年連続17度目の甲子園出場を決めた。『ミラクル星稜』と話題となった試合だ。
「自分たちは必死に勝ちたいと野球をやっていただけなので、どれほど凄い事かと言われても、そこまでの実感はなかった。新聞やネット報道を見てからですかね。テレビをつけても地元のニュースはそればっかりだった。その時に初めて感じました」
世間の注目がイッキに集まった。取材が殺到した。そして何よりも3年夏の甲子園出場をプロ入りの一つの条件と考えていた岩下の人生も変わっていった。
「あそこで勝っていなかったら、プロには入っていなかったかもしれない。自分自身の自信の問題もありますし、スカウトの方の注目の仕方もある。そういう意味では人生を変えた一瞬かもしれない。僕にとって、とても大事な試合であることは間違いない」
あの試合。8点ビハインドでも、岩下ら星稜ナインは笑顔を忘れなかった。それは春を前にチームで決めたキャッチフレーズ「必笑」の心を、体現したものだった。大会を前に、全員でキャッチフレーズを決めるミーティングを行い、岩下が提案したものだった。
「中学校の時の七夕の日に短冊に『笑いたい』と書いたのを思い出したんです。その時も全国大会の前で笑って終りたいし、せっかくだから、笑顔でプレーをしたいなあと思って。それを思い出して提案したら、採用されました。笑う事はリラックスにもつながるし、いろいろなプラス作用はあると思った。だから必ず笑う。どんな場面でも諦めずに笑って前を向きたいという気持ちが最後の最後で大きな力になった」