ミラクル星稜から1年 「後輩の夢が広がるように」岩下大輝が踏み出すプロの第一歩【マリーンズ浦和ファーム通信#2】
一軍での活躍を夢見て、日々二軍の浦和球場で汗を流す若鴎たちを、マリーンズ広報がクローズアップする連載『マリーンズ浦和ファーム通信』。第2回目は、昨年の全国高校野球選手権大会石川大会決勝で奇跡の大逆転を起こし、プロへの道を開いた星稜高出身のルーキー岩下大輝投手だ。
2015/07/27
画像提供:株式会社千葉ロッテマリーンズ
自分の頑張りで後輩の夢が広がるように
岩下にとっては2年夏の甲子園での苦い思い出も糧になっていた。1回戦の鳴門高校戦で先発登板。6回までは1-1と好投をしていたが、7回に一挙、8失点し敗れた。
「野球の怖さを知った。ちょっとの気の緩みというか油断からイッキにやられた。あの時の経験があるから、もしかしたら、これだけ点差があっても、一つのキッカケでなんとかなるかもしれないという思いがあった」
練習を終えた岩下はマリーンズの二軍クラブハウスで懐かしそうに1年前を振り返った。
3月に右ひじを痛め、その後も痛みが引かなかったため、前半戦は大事を取り、体力強化、下半身強化期間とする方針で二軍戦の登板、デビューはしていない。二軍戦がある時はバックネット裏でチャートをつけるか、ボールボーイ係を任されている。同じ年では野手の香月一也内野手、脇本直人外野手がスタメンに名を連ね、試合での場数を踏んでいるため焦りはあるが、今は我慢の時と自分に言い聞かせる日々は続く。7月にピッチングを開始。シート打撃での登板も行い、8月からいよいよ練習試合などで実戦を踏んで、イースタンリーグでのデビューをする段階にまできた。
今年の7月24日、母校は昨年、ミラクルを起こし、逆転した小松大谷高校にサヨナラ負けを喫した。毎試合、後輩たちの事を気にして、楽しみにしていた岩下は今も金沢に残る仲間と家族からその一報を伝え聞き、結果を知った。
「残念ですけど、仕方がない。3年間、悔いなく練習をしてよくやったと思う。一つ下は僕らよりも凄いメンバーだった」
甲子園出場が決まった際にどのような差し入れを送ろうかと考えるなど吉報を楽しみにしていただけに、残念な結果とはなった。が、後輩一人ひとりの顔を思い浮かべ、やはり笑顔で労いの言葉を並べた。
「今、まだ自分は投げれていないですけど、自分のモチベーションは一緒に野球をした仲間や後輩の存在なんです。自分が頑張る事で夢も広がるかもしれない。いろいろな事で元気を与えられるかもしれない」
岩下はオールスター休みを利用して地元に帰省をした。わずか1泊。誰もいない時間帯だったが、練習を行った想い出のグラウンドにも立ち寄った。そこにはいろいろな思い出、いろいろな人の想い、夢が詰まっているように感じた。17人いた同級生のチームメイトで硬式野球を続けているのは岩下を含め6人ほど。一緒に過ごした一つ下の後輩たちもまたそれぞれの道に旅立つことになる。あの夏、ミラクル星稜と言われ、世間をアッと言わせたことは今も人生の誇りだ。
そしてその代表として、早くプロのマウンドで存在感を見せたいと思っている。
8月、いよいよ背番号「46」がプロの舞台で注目の第一歩を踏み出す。