セの松井秀喜、パのイチロー時代到来 セイバーメトリクスの視点で過去の打撃ベスト10を振り返ろう ~1996年編~
2020/10/15
Getty Images, DELTA・道作
1996年のパ・リーグ
チーム 試合 勝率 得点 失点 得失点
オリックス 130 .597 607 529 78
日本ハム 130 .540 527 502 25
西武 130 .492 517 521 -4
近鉄 130 .481 555 571 -16
ロッテ 130 .472 456 525 -69
ダイエー 130 .422 551 565 -14
イチロー(オリックス)がブレイクのシーズンから3年連続でwRAA首位となった。高卒5年目までに3回wRAAリーグ首位となった選手はイチロー以前に川上哲治(当時読売)1人だけで、55年ぶり。各チームが毎年100試合以上のリーグ戦を挙行するようになってからはイチローが唯一の選手となる。最高出塁率と首位打者を併せての獲得は3年連続となった。
2位に入ったのは同じオリックスのトロイ・ニール。本塁打王・打点王を獲得し、最高長打率も記録。1打席あたりの得点貢献を示すwOBA(※3)ではイチローを上回る.404でリーグ首位と、同じチームの2人の中心選手がリーグ最強打者を分け合う形となった。
5位にはタフィー・ローズ(近鉄)が初のランクイン。後年の歴史的なスラッガーとしての活躍をすることになるが、来日直後はそこまでの打者ではなかったことがよく知られている。とはいえ実はこの来日時点ですでにかなり危険な打者であったようだ。面白いのは9位のロブ・デューシー(日本ハム)で、打率.246、26本塁打というスタッツでほぼ1年間1番を打っていた。低打率から不向きだったと感じる人が多かったようだが、実は出塁率が.373とリーグ7位の数字を残していた。出塁率.408の片岡篤史を1番で使わない場合、デューシーが最も適任の可能性があった。日本ハムは後年、小笠原道大を2番で使ったこともあるなど、セイバーメトリクスが推奨する打順とは縁が深い球団のようだ。
ベスト10圏外での注目選手は11位の中村紀洋(近鉄)。この時点では特に異様なスタッツではない。ただここからパ・リーグをリードする存在にまでのし上がる契機の年として、同じ立場、同じ球団のローズと同様に取り上げた。
リーグ戦は前年の極端な貧打から是正が図られたようで、前年比で本塁打は100本増、打率は1分上昇、長打率は2分上昇している。2019年までの50年間におけるパ・リーグは年間130試合あたりの得点が554点。この年は535.5点なので、496点であった前年に比べればかなり標準的なシーズンだった。過去の歴史を遡れば、打撃上位だろうが投手上位だろうが、行き過ぎた時にそれを揺り戻すような動きは必ずある。運営側も時代を問わずバランスには気を遣っているようである。