大谷翔平選手をはじめとした日本人メジャーリーガーを中心にメジャーリーグ・日本プロ野球はもちろん、社会人・大学・高校野球まで幅広いカテゴリーの情報を、多角的な視点で発信する野球専門メディアです。世界的に注目されている情報を数多く発信しています。ベースボールチャンネル



役割を果たしグレートカムバックの上沢こそ、今年のエースにふさわしい!【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#132】

上沢直之と有原航平、2人の「エース級」が揃うファイターズ。ではエースは誰?と聞かれたら、一体どちらを答えればいいのだろうか。

2020/10/18

text By



開幕前予想から対照的だった二人

 有原航平は最多勝に輝いた昨シーズン(19年)のピッチングが圧巻だった。15勝8敗、防御率2.46。この年の沢村賞は「該当なし」だったが、有原は有力候補だった。それまで外寄り一辺倒で、周囲がいくら言ってもインサイドを突かない投球だったが、19年はツーシームを覚え、右打者の内角を攻められるようになった。まぁ、これまで「外角だけで何とかなってしまっていた球威」のほうに驚くべきかもしれないが。
 
 僕は「インサイドを突く有原」はひとつの完成形だと思った。これはケガ明けの上沢とは差がつくだろう。上沢は軸足のひざの皿を割ったのだ。軸足の安定は投球の要だ。もしかしたら二度と上沢のキレのある投球は戻らないかもしれない。
 
 と思ったら今シーズン、有原は悪いほうへ上沢は良いほうへ予想をハズしてくれた。有原は不動のエースに成長するべきシーズンだったが、開幕から背信のマウンドが続いた。コロナ禍での遅い開幕が何か影響したのかもしれないが、好投していても試合中盤でつかまる。
 
 ついにはローテの順番を変えることになる。開幕投手はそのままずっと相手チームのエースと当たり続けることになる。いわゆる「エースローテ」だが、今季の有原にはこれが重荷だった。「不動のエース」ならぬ「移動のエース」(?)は相手チームの2番手3番手とマッチアップするようになり、ようやく勝ち星がついてきた。チーム戦績の上では良いことだが、これでそこそこ勝ってもエースとは呼べない。
 
 そこへ行くと上沢はシーズン当初こそ調整登板だったが、途中からエースローテで回るようになる。ヒザの影響は間違いなくあると思うのだ。が、投球フォームを研究し、最大限のチーム貢献を果たしている。以前の安定感はないのだ。投球がバラついたり、抜けだすと修正に手間取ったりする。それでも役割は立派に果たしている。正直、ここまで復活してくれるとは思わなかった。
 
 エースの称号っていうのは何なのかといえば役割のことだ。僕は今季、エースの働きをしているのは手負いの上沢だと思う。いくら得意球団、不得意球団があるといっても、そもそも今季、戦力になるかどうか誰にもわからなかったのだ。グレートカムバックではないか。
 
 と、ここまで考えて冒頭の編集者には「上沢直之」と答えることにした。エースは上沢。これでファイナルアンサー。じゃ、有原は何と呼ぶ? うーん、そうだなぁ、有原はキングかなぁ。

1 2


error: Content is protected !!