ローズ、ゴメス、ホージーと外国人選手が活躍 セイバーメトリクスの視点で過去の打撃ベスト10を振り返ろう ~1997年編~
2020/10/18
Getty Images, DELTA・道作
1997年のセ・リーグ
チーム 試合 勝率 得点 失点 得失点
ヤクルト 137 .615 672 503 169
横浜 135 .533 572 548 24
広島 135 .489 651 653 -2
読売 135 .467 550 536 14
阪神 136 .459 504 575 -71
中日 136 .437 510 644 -134
横浜のロバート・ローズがwRAA42.3で初の1位を獲得。打撃三冠は無冠だったが、二塁打・三塁打・四球を多く記録し、総合的には最も多くの得点を生み出した。.444で最高出塁率を獲得しているが、最強打者であるというイメージを持たれにくいスタッツでトップとなっていることは、パ・リーグ1位の鈴木健と共通する。
2位松井秀喜(読売)はwRAA41.5でわずかにローズに及ばなかった。ローズに比べるとアウトを与えすぎたことと、二塁打が少なく安打に占める長打の割合が本人としては低かったことが原因で首位を逃がしている。松井は1996年以後、偶数年はすべてリーグ首位で、奇数年は1度もトップになることのないままヤンキースへ移籍となる。
3位はwRAA38.2を記録した中日のレオ・ゴメス(中日)。この年はナゴヤドーム開場年で中日の打者が軒並み数字を落とし、チーム得点が前年に比べて131点も減少する中、予想外の好成績を残した。ピッチャーズパークのナゴヤドームでトップのドゥエイン・ホージー(ヤクルト)と.035差の長打率.559は出色のものである。
4位ホージーは38本塁打で本塁打王。長打の合計73本が単打71本より多いなど、かなり長打力に偏った成績を残している。来日時の予想や、細身な見た目から受ける印象とはかけ離れたプレーを見せた。.594で最高長打率も記録している。6位鈴木尚典(横浜)は初のベスト10入り。打率.335で首位打者を獲得している。
ベスト10圏外の注目選手では、パ・リーグで挙げた松井稼と同じく、チャンスメーカーの石井琢朗(横浜)を挙げる。出塁系のスピードスターとして、横浜にチャンスを提供し続けた。ベスト10まではもう少しとなっている。
横浜はこの年、まだそこまで強力な打線というわけではなかったが、ローズ、鈴木尚がともにリーグ上位のwRAAを記録するなど、マシンガン打線の骨組みはすでに完成していた。マシンガン打線の肝は、本来守備型のポジションである二塁・遊撃に、ローズ・石井琢という攻撃の中心となる打者が配置できたことだ。本来下位打線に配置されるようなポジションの選手が強打者となれば自然に強力打線を形成することが可能だ。捕手に古田敦也という強打者を配備したヤクルト打線が常に強力であったことと事情は同じである。
そのヤクルトはチーム得点672が最多の上に、チーム失点503は最少。83勝を挙げ、リーグを圧勝した上に日本シリーズを制覇と、能力の高さを見せたシーズンであった。
(※1)wRAA:リーグ平均レベル(0)の打者が同じ打席をこなした場合に比べ、その打者がどれだけチームの得点を増やしたかを推定する指標。優れた成績で多くの打席をこなすことで値は大きくなる。
(※2)勝利換算:得点の単位で表されているwRAAをセイバーメトリクスの手法で勝利の単位に換算したもの。1勝に必要な得点数は、10×√(両チームのイニングあたりの得点)で求められる。
(※3)wOBA(weighted On-Base Average):1打席あたりの打撃貢献を総合的に評価する指標。
(※4)平均比:リーグ平均に比べwOBAがどれだけ優れているか、比で表したもの。
DELTA・道作
DELTA(@Deltagraphs)http://deltagraphs.co.jp/
2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える デルタ・ベースボール・リポート1~3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『1.02 Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』(https://1point02.jp/)も運営する。