マシンガン打線炸裂。高橋由伸も登場 セイバーメトリクスの視点で過去の打撃ベスト10を振り返ろう ~1998年編~
2020/10/21
Getty Images, DELTA・道作
1998年のパ・リーグ
チーム 試合 勝率 得点 失点 得失点
西武 135 .534 586 559 27
日本ハム 135 .508 635 571 64
オリックス 135 .500 586 609 -23
ダイエー 135 .500 546 596 -50
近鉄 135 .496 593 629 -36
ロッテ 135 .462 581 563 18
この年は近鉄のフィル・クラークがwRAA40.1でトップとなった。出塁率は.378とトップの選手にしてはやや低いが、.593と高い長打率を記録し、出塁能力を補った。48二塁打は1956年山内和弘(当時毎日)の47二塁打を更新するシーズン最多記録。打撃三冠の首位はなかったものの、wRAA、1打席あたりの得点貢献を示すwOBA(※3)、長打率でリーグをリードした。ほかに近鉄では、中村紀洋が32本塁打を記録してベスト10入りしていただけに、タフィー・ローズ(近鉄)が好調をキープしていれば規格外のクリーンナップになっていたかもしれない。
イチロー(オリックス)はこの年5年連続首位打者の新記録。wRAAランキングでも2位をキープしているが、このシーズンを最後にNPBでのフル出場は途切れる。3位には片岡篤史(日本ハム)がイチローを上回る最高出塁率.435をマークしてランクイン。113四球は1990年清原和博(西武)の105四球を上回る当時パ・リーグ新記録となった。ほかにはトロイ・ニール(オリックス)がwOBAでクラークにわずか2厘差と迫ったものの、欠場の多さが響いてwRAAの順位は5位に留まっている。
ベスト10圏外での注目選手は17位のナイジェル・ウィルソン(日本ハム)。順位こそ低いが33本塁打、124打点で二冠王を獲得。日本ハムのビッグバン打線において中軸を担った。
このシーズンのパ・リーグは勝敗の偏りが顕著なシーズンであった。日本ハムは前半戦で圧倒的に勝ちまくり、前半戦では優勝確実と目されていた。最大ゲーム差をつけた7月27日の時点では53勝30敗1分、勝率.639で2位との差は9.5ゲームであったが、ここから歴史的な失速を見せてしまった。歴史を見れば、確かにこれ以上のゲーム差をまくられた球団はあるが、こうした例は追いかける側のチームが驚異的なペースで勝ってのものである。この年の日本ハムはここから14勝35敗2分。勝率2割台で貯金を21個食いつぶすなど、自分から勝率を低下させて優勝を逃している。後半戦はオリックスが強く、まるで日本ハムとチームが入れ替わったようにも見えた。
ほかには、この年ロッテの18連敗が記録されている。ただこの年のロッテが特別弱かったというわけではない。18連敗前の成績は23勝25敗。連敗後に限っては、38勝28敗2分と大きく勝ち越している。前後のチーム状況から考えると、大型連敗は木に竹を接いだような状態である。チーム力自体は十分にあったようで、結局ロッテは得失点18とプラスのままで最下位になってしまった。ちなみにNPBにおいて得失点プラスでの最下位はあるがマイナスでの優勝はまだない。日本ハムの例といい、ロッテの例といい勝敗の表れ方において奇妙なシーズンであった。