4年前のV逸を教訓に 混セの主役に!好調ヤクルトの四番・畠山の『献身』【野球コラム 新・燕軍戦記#9】
東京ヤクルトスワローズが『セ界』の主役に躍り出ようとしている。前半戦最終戦から怒涛の7連勝で、一時は単独首位に進出。その快進撃を支えた好調打線の四番バッターが、プロ15年目の畠山和洋である。
2015/07/29
「先を見ないこと。勝てる試合をキッチリ勝つこと」
26日の中日戦まで7連勝したヤクルトだが、これだけの連勝は2011年9月に9連勝して以来のこと。あの頃、スワローズは快調に首位を走り、10年ぶりのセリーグ制覇は時間の問題と思われていた。ところが──。
「あの時は僕らの考え方が間違っていた。優勝したいというより、ちょっと浮き足立っていて、このままいけば優勝できるっていう感覚で……。でもそんなに甘くないし、終盤になって負けられない戦いになった時に、地に足を着けて野球ができてないような感じになった。どんどん追い詰められていった時に硬さが出たり、いろんなことがあったと思うんですよ」
当時も四番を打っていた畠山は、4年前をそう振り返る。9連勝した9月15日の時点で貯金は17。2位の中日とは6ゲームもの差があり、優勝へのマジックナンバー点灯も目前と伝えられていた。しかし、チームはそこから大失速。猛追してきた中日に、土壇場で優勝をさらわれる悔しい結果となった。
ヤクルトは現在、阪神と並んで同率首位に立っているが、今季のセリーグは史上まれに見る大混戦。あの2011年とはずいぶん状況が違う。だから、チームには首位を過剰に意識する様子は見られないし、変に浮き足立ったところもない。それでもこのままシーズンが終盤に向かって進んでいけば、いやおうなく意識させられる時期が来るはずだ。
「どっちにしても先を見ないで戦うことですよ。2011年の時は(残りの試合を)5割でいけばいいとか計算したり、目の前の試合じゃなくて余計なことを考えたりしていた。だから、まずは目の前の試合を勝つ、勝てるゲームをキッチリ勝つっていうことが大事だと思うんです」(畠山)
暑い夏が訪れ、投手陣に疲れが出てくるこの時期、勝つためには打線の援護は不可欠。二番の川端や、三番を打つ山田の好調ぶりばかりがクローズアップされているが、四番に座る畠山の存在感は大きい。
「後ろにハタケ(畠山)さんがいるのは安心ですよね。開き直れるっていうか、自分が打てなくても(畠山が)打ってくれるみたいなのがあるんで。だから思い切っていけるっていうのは、あると思います」
セリーグのホームラン王争いのトップを走り、トリプルスリー(3割・30本塁打・30盗塁)や三冠王の期待もかかる山田もそう話す。
ヤクルトが最後に優勝した2001年、高卒1年目のルーキーだった畠山に一軍での働き場所はなかった。その10年後、主力として手にするはずだったペナントは、あとわずかのところでスルリと逃げていった。過去2年はまったく縁のなかった「優勝」の2文字が、今は確実に目に見える場所にある。混セを抜け出し、今度こそそれを手に入れるためにも、ツバメの四番・畠山の献身は続く。