【野球コラム】2000本安打達成も獲得当時は賛否両論 数字という結果で、楽天ファンの心をつかんだ松井稼頭央
楽天・松井稼頭央が、王手をかけていたプロ野球史上46人目の2000安打を達成した。2011年以降、楽天選手の安打、二塁打、三塁打、本塁打、打点はトップの数字。さらに今季からコンバートされたライトの守備でも存在感を発揮している。
2015/07/29
今や楽天の顔に
4月11日オリックス戦で史上54人目の3000塁打、5月27日阪神戦では18人目350盗塁。今シーズン、記録ラッシュを迎えている楽天・松井稼頭央が、王手をかけていたプロ野球史上46人目の2000安打を達成した。ソフトバンク・中田賢一の低め変化球を中前へ運び、ソフトバンクからは松田、楽天からは嶋による両軍花束贈呈が行われた。
メジャーでそれなりの成績を残しNPBで2000本を積み重ねた唯一にして当代随一のスイッチヒッターは、この後も200本塁打、400二塁打とメモリアルイヤーは続いていく。
楽天入団は2010年11月25日。
星野監督就任直後、2年3億円でサイン。8シーズンぶりにNPBに復帰した。時を同じくして横浜との間で生え抜き主力の渡辺直人(現西武)の金銭トレードが成立したこともあり、当時は賛否両論。正直、楽天ファンは戸惑いを隠せなかった。
しかし今、渡辺トレードの是非はさておくことにしても、松井稼の獲得、その後の活躍に疑問を挟むファンは、おそらく誰1人いないはずだ。
2012年からは山崎武司の背番号7を継承。ベテラン選手としてチームの精神的支柱を担うことになった松井稼は、その豊富な経験と自らの技量を惜しみなくチームに還元し、2013年初Vの立役者になった。タイムリーを放った打者がファンと一体感、喜びを分かちあうため、塁上で手をかざす行為『Burn!』。これをチームに広めたのも松井稼だ。
思い起こせば、初Vの起点を担ったのも、この人の槍働きである。
2013年5月4日オリックス戦。当時イーグルス相手に2008年から11連勝を続けていた好敵手・金子千尋に5年1カ月ぶりに土をつけさせたのも、松井稼だった。この試合、2ランを含む3安打4打点、チームの全得点を叩き出す独擅場の活躍をみせた。天敵を打ち負かした楽天はその後、波に乗る。一気に借金を減らし交流戦で上昇気流を捉え、2カ月後の7月4日には遂に首位へ。以降1度もその座を明け渡すことなく、リーグ制覇、日本一まで駆け上がった。
2011年以降、楽天選手の安打、二塁打、三塁打、本塁打、打点を調べてみた。松井稼が記録した567安打、124二塁打、12三塁打、231打点は、いずれもチーム最多。46本塁打もアンドリュー・ジョーンズの50本に次ぐチーム2位である。あの軸回転から生まれる勝負強い打撃で、楽天に最も足りない長打を安定供給。
在籍5年目だというのに、5本のサヨナラ打は楽天歴代打者最多数を記録しているのだ。松井稼なくして2011年以降のイーグルスはありえなかったと言えるのだ。