“神様”川相昌弘氏が語るバント論「バントにも狙い球がある」。世界記録を生み出した至高の技術
プロ野球春季キャンプが2月1日から、宮崎と沖縄で一斉に開始する。阪神タイガースでは、元巨人・中日で現在は評論家としても活躍する“バントの神様”川相昌弘氏が臨時コーチを務めることで話題となっている。今回は川相氏の著書『ベースボールインテリジェンス』から、11月25日に公開した技術論、指導論を再掲載する。同氏のコーチングを受けるつもりで一読すると、より深く野球を知るきっかけとなるかもしれない。
2021/01/26
難しいコースには手を出さない
バッティングに狙い球があるように、バントにも狙い球がある。ストライクゾーンすべてをやろうとしたら、成功率が下がるのは当たり前のこと。初球からわざわざ難しいコースに手を出す必要はないのだ。
私は、ホームベースを真ん中から二分割にして、若いカウントではアウトコースの際どいコースを見逃すこともあった。インコースの高めに目付をしていること、目から遠いコースであることを考えると、もっともバントをしにくいコースだからだ。特にコントロールが荒れているピッチャーの場合は、余計にインハイのストレートに対する意識が強くなるので、その荒れ球の中でビシッとアウトローに決められると、簡単にはバントはできない。こういうときは無理に決めようとせずに、1球待ったほうがいいだろう。
バントのときに考えられる配球は、インコースのストレートか、外に逃げる変化球であることが多い。インコースを苦手な人がいるかもしれないが、私からしてみれば、インコースのほうが簡単だ。コツは、恐怖心に負けずにバットの面をしっかりと保っておくことと、後ろ足を三塁側ベンチのほうに引いて、体の前に空間を作ることだ。自分自身が後ろに下がることによって、ボールとの距離を取ることができる。