新庄剛志引退。福留孝介・ウッズがセを席巻 セイバーメトリクスの視点で過去の打撃ベスト10を振り返ろう ~2006年編~
2020/11/23
Getty Images, DELTA・道作
2006年のセ・リーグ
チーム 試合 勝率 得点 失点 得失点
中日 146 .617 669 496 173
阪神 146 .592 597 508 89
ヤクルト 146 .490 669 642 27
読売 146 .451 552 592 -40
広島 146 .440 549 648 -99
横浜 146 .408 575 662 -87
福留孝介(中日)がwRAA66.1と自身最高のパフォーマンスを発揮してリーグ中日を優勝へと導いた。wRAAのほか、wOBA、打率出塁率、長打率でリーグ首位となっている。wRAA66.1は中日の球団記録であり、最高出塁率・長打率の同時記録は中日の選手としては1991年落合博満以来。二塁打47本を記録するなど、長打83本は投手有利のナゴヤドームを本拠地とする選手としては出色のスタッツであった。
3番福留のあとを打った4番タイロン・ウッズは2位にランクイン。47本、144打点で本塁打・打点王を獲得した、wRAA56.8は通常シーズンならリーグ1位レベルの数字である。この福留、ウッズ2人の合計で120点以上の余剰得点を獲得した中日はリーグ最多タイの669得点を記録。失点も496と最少を記録して優勝した。ほかにはこの年から読売に移籍した李承燁がキャリアハイをマークしている。
4・5・7位にはヤクルト勢の岩村明憲、アダム・リグス、青木宣親の3人がランクイン。タイプは異なるが得点貢献の高い打者が揃い、ヤクルトは中日と並ぶリーグ最多得点をマークした。岩村は地味ながら3年続けて打率3割30本塁打をクリアしたほか、リーグ3位の39本塁打を記録したリグスが2番打者を務めるなど、セイバーメトリクスの観点からも注目の打線だった。
ベスト10圏外での注目選手は横浜の吉村裕基である。この年はプロ入り4年目でレギュラーの座を確保。規定には36打席ほど不足したが、wOBAは5位相当の.388を記録した。四球を狙わない積極的な打撃スタイルであったため、この年は416打席で10四球の獲得に留まっている。9位の村田修一とともに横浜の将来を担う逸材とも思われたが、あまりに偏った打撃スタイルが大成を妨げた感が強い。
この頃はスポーツ全般に新時代を迎えた時代でもある。「北海道代表が甲子園で優勝」「日本人が水泳自由形、そして陸上競技で金メダル」「北海道にプロ球団ができて日本シリーズ制覇」といった具合である。これらは筆者が生きている間に目にすることはあるまいと思っていたが、この直近3年だけですべて実現している。月並みだがスポーツというものはわからない。年季の入ったラグビーファンでも、生きている間に日本が南アフリカに勝つことはあるまいと思っていたことだろう。
(※1)wRAA:リーグ平均レベル(0)の打者が同じ打席をこなした場合に比べ、その打者がどれだけチームの得点を増やしたかを推定する指標。優れた成績で多くの打席をこなすことで値は大きくなる。
(※2)勝利換算:得点の単位で表されているwRAAをセイバーメトリクスの手法で勝利の単位に換算したもの。1勝に必要な得点数は、10×√(両チームのイニングあたりの得点)で求められる。
(※3)wOBA(weighted On-Base Average):1打席あたりの打撃貢献を総合的に評価する指標。
(※4)平均比:リーグ平均に比べwOBAがどれだけ優れているか、比で表したもの。
DELTA・道作
DELTA(@Deltagraphs)http://deltagraphs.co.jp/
2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える デルタ・ベースボール・リポート1~3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『1.02 Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』(https://1point02.jp/)も運営する。