内川聖一が右打者史上最高の打率.378を記録 セイバーメトリクスの視点で過去の打撃ベスト10を振り返ろう ~2008年編~
2020/11/29
Getty Images, DELTA・道作
2008年のパ・リーグ
チーム 試合 勝率 得点 失点 得失点
西武 144 .543 715 626 89
オリックス 144 .524 637 605 32
日本ハム 144 .514 533 541 -8
ロッテ 144 .510 662 648 14
楽天 144 .461 627 607 20
ソフトバンク 144 .454 556 641 -85
復活のアレックス・カブレラ(オリックス)が37歳で2度目のランキング1位となった。1打席あたりの得点貢献を示すwOBA(※3)や長打率で1位を記録。その他のスタッツを見てもかなりバランスの取れた成績だった。同じオリックスのタフィー・ローズも好調で、打点王を獲得。出塁率、長打率でカブレラにわずかに劣るも、打席数はローズが上回った。これにより最終的なカブレラとローズのwRAAはほとんど誤差の範囲となっている。この2人を含んだ中軸は他の追随を許さない強力さで、前年まで低迷していたオリックスは優勝した西武にわずか2.5ゲーム差の2位にまで躍進している。
3位の中島裕之(西武)は.410で最高出塁率を獲得。優勝の原動力ともなり、自己最高のシーズンとなった。6位に入ったG.G.佐藤(西武)は五輪参加選手の特例で規定打席に到達。キャリアで唯一打率3割をクリアしたシーズンとなった。
この年初めて規定打席に達して本塁打王となったのは4位の中村剛也(西武)である。中村はカブレラ、ローズを上回る46本塁打を記録。この年含め2016年までの9年間は規定に達したすべてのシーズンで本塁打王を獲得することになる。またこの年の中村は本塁打に限らず長打の面で特殊な記録をのこしている。一般的に長打の数が単打の数を上回ることは歴史的に見ても非常に珍しい。それがこの年の中村は長打74本に対し単打54本。長打が単打を20本も上回っている。これは長打が単打を超過した数としてこの時点での歴代最多記録である。上回るだけでも珍しいのに、20本も超過しているのは異様で、長打に特化した中村の才能が特徴づけられる一面である。
この年に行われた北京五輪は、打線のパワー不足が要因となりメダルに届かなかったが、中村の参加があれば事情は変わっていたかもしれない。選考の時点では実績を残した選手ではなかったのでさすがに無理だろうが、その後もどこかで一度は国際試合の舞台でその異能が発揮される様子を見たかったものである。
ベスト10圏外の注目選手としては打率.332で首位打者となったリック(楽天)を取り上げる。熾烈な争いの末に打率1厘差で中島を上回った。この年代になってくると、過去の年代には見られなかった首位打者を獲得しながらベスト10を外れるケースが散見される。こうした選手に共通するのは長打と四球が揃って控えめな点である。リックは45本の長打を放っておりこの面で致命的ではなかったが、四球がわずか25個の獲得に留まり、wRAAが伸びなかった。