消えかかるファイターズ野球。コーチ陣大幅配置転換、育成球団へ原点回帰を【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#136】
来季、ファイターズのコーチ陣は1軍2軍で大幅な配置転換が行われる。長期的な視点でチームが浮上する上で必要な対策として、北広島の新時代を支える戦力の「育成」にある。
2020/12/13
OB2人が指摘した根本的な課題
2020年師走。世間的にはファイターズの話題は「新庄剛志のトライアウト挑戦」と「斎藤佑樹・契約更改の是非」であるようだ。あるいはその両方がくっついて「故障持ちの斎藤と契約するくらいならなぜ新庄を獲らない?」「斎藤が新庄の背番号1を引き継いでるなんて恥知らずだ」みたいな論調もお見受けする。
が、僕のこのオフの最大の関心事はファイターズの組閣、とりわけ2軍の人事なのだ。せっかくのオフなので「来季の順位予想」とか「有原・西川の穴は誰が埋める?」とか、そういうキャッチーな話題より、もう少しレンジの長い話にスポットを当てたい。
それはもちろん育成に関わる話だ。
非常に地味でもあるし、簡単に結果が出ない話なのだが、本質的なファイターズの浮上はそこにかかっていると思うのだ。福岡ソフトバンクホークスの凄みも要するにそこにあると思う。
かつて鎌ケ谷の2軍施設を作ったとき、ファイターズもそこに注力した。ゼロ年代のチームの飛躍は(新庄剛志、稲葉篤紀のような大駒獲得もあったけれど)基本的には鎌ケ谷卒業生、森本稀哲、田中賢介、高橋信二、鶴岡慎也…、といった顔ぶれがチーム力の土台を担ったところにある。ファイターズは育成に定評のある球団だった。それが今はソフトバンクに完全にお株を奪われた感がある。
一からやり直しだなぁと思うのだ。
今シーズンのエラーの多さ(Eがつかないものも含めて)を見て、これはどうしたもんだろうかと頭を抱えた。守備だけではない。ひとつ先の塁を奪おうとする走塁。(アウトカウント、ランナーのあるなし、カウントによる)ケースバッティングの意識。バント、右打ち等、繋ぎのバッティング技術。そういう「野球力」とでも呼びたいようなものがガクンと落ちている。
僕はこの秋、田中幸雄さん、岩本勉さんという2人のOBとお会いして、そこを直撃したのだ。かつて他球団から警戒された「ファイターズ野球」が消えかかっている。どうしたらいいでしょう? 何が足りないですか?
幸雄さんとガンちゃんに会ったのは別の日、別の場所だったんだけど、驚いたことに全く同じ答えが返ってきた。「練習が足りないと思うんですよね。昔みたいにはやってないでしょ」(幸雄さん)、「ハッキリ練習不足です。土台を作らないで上っ面だけでやってるから立ち戻る場所がありません」(ガンちゃん)。
田中幸雄さんと話したとき、猿渡さんの名前が出た。猿渡寛茂さん。通称「サルさん」。最終的にはヤクルトの2軍監督、BC信濃の監督を務められた名コーチだ。現役時代の派手な実績こそないが、指導者として足跡を残された。ある時期までファイターズの(特に高卒の)在籍選手でサルさんの世話にならなかった者はいないんじゃないか。ホントに根気強いコーチだった。幸雄さんは「サルさんみたいな人がいないから」と言う。