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史上初の“5冠”も夢ではない。前人未到の挑戦が続くヤクルト、山田哲人【広尾晃の「ネタになる記録ばなし」】

ブログ「野球の記録で話したい」を運営中で『プロ野球解説者を解説する』(イーストプレス刊)の著者でもある広尾晃氏。当WEBサイトでは、MLBとNPBの記録をテーマに、週2回、野球ファンがいつもと違う視点で野球を楽しめるコラムを提供していく。今回は、前人未到の5冠達成も見えてきたヤクルト・山田哲人をはじめ、野手の主要タイトルについてだ。

2015/07/31

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スピードと長打力を備えていなければ達成できない

 これまで5冠に最も迫ったのが、1995年のイチローだ。この年、イチローは安打、打点、盗塁に加え、80打点でロッテの初芝清、日本ハムの田中幸雄と打点王のタイトルを分け合った。そして本塁打数は小久保裕紀の28本に3本差に迫る25本を打っていた。25本塁打はイチローのキャリアハイ。「三冠王」を取らずに4冠を手にした選手はイチローだけだ。しかしこのイチローをもってしても5冠には手が届かなかった。その後、松中信彦が「三冠王」に加え最多安打もとって4冠を達成している。

 こうしてみると、5冠を達成する上で、最も難易度が高いのは「盗塁」だということがわかる。打率と安打は、相関関係が強い。また本塁打と打点も相関関係が強い。この4つを取ることは、アベレージヒッターで長打力も兼ね備えた選手には不可能なことではない。事実「三冠王」+最多安打の4冠は、8回達成されている。

 しかし盗塁は、打撃のタイトルではなく、脚力、俊敏性と言う全く異なる資質を求められる。強打者で、しかもリーグ一の脚力を持っている選手は稀なのだ。過去にその可能性があったのは、前述のとおり、長嶋茂雄、イチローの2人くらいだった。

 山田哲人は履正社高校時代、夏の甲子園で決勝のホームスチールを決めて注目された。50m5秒8と言うずば抜けた俊足の持ち主だ。しかも高校通算31本塁打の長打力でも注目された。スピードと長打力と言う2つの資質に恵まれた稀有のアスリートなのだ。

 山田哲人が5冠を獲得するには、同じく打撃絶好調のヤクルトのチームメイトたちとの競り合いに勝たなければならない。
 大変なプレッシャーもあるだろが、歴史に残る大記録にぜひチャレンジしてほしい。

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