柳田悠岐、山田哲人がトリプルスリーを達成 セイバーメトリクスの視点で過去の打撃ベスト10を振り返ろう ~2015年編~
2020/12/25
DELTA・道作
2015年のセ・リーグ
チーム 試合 勝率 得点 失点 得失点
ヤクルト 143 .539 574 518 56
読売 143 .528 489 443 46
阪神 143 .496 465 550 -85
広島 143 .493 506 474 32
中日 143 .446 473 504 -31
DeNA 143 .437 508 598 -90
セ・リーグ側にもトリプルスリーが誕生。二塁手としては史上初となる山田哲人(ヤクルト)が偉業を達成した。この年は38本塁打34盗塁でタイトルを獲得したが、この同時受賞はトリプルスリー達成者としては史上初である。二塁打も39本でリーグ最多だったこともあり、79本の長打は2番手に24本の大差をつけての最多であった。結果、wOBA.439とwRAA67.7は大差をつけてのリーグトップ。出塁率.416、長打率.610でもリーグをリードした。こちらも勝利換算の7.6は極めて高い数値で、二塁手としては史上最高のものである。
2位には本格化した筒香嘉智(DeNA)がwRAA41.8でランクイン。後年、長打力が最大の武器となるが、このシーズンはむしろ出塁能力の方が山田に迫っている。出塁率・長打率ともに山田が1位、筒香が2位となったため、総合指標のwRAAでは1位と2位だけでなく、2位と3位以下も大きく離れるかたちになっている。
3位の川端慎吾(ヤクルト)は打率.336で初の首位打者を獲得してのランクイン。また、6位の畠山和洋(ヤクルト)は105打点で打点王を獲得と、全打撃タイトル及び盗塁王はすべてヤクルト勢の手に渡った。また2013年にMLBから復帰していた福留孝介(阪神)がこの年にようやく復調。MLB移籍をまたいで9年ぶりにベスト10に返り咲いている。
9位10位の丸佳浩(広島)・鳥谷敬(阪神)は、打率や本塁打といった従来の指標では振るわないシーズンであった。しかし四球はそれぞれ1位、2位。一般的な指標がこの程度にとどまりながらランクインするあたりに、両者のしぶとさがよく表れている。特に鳥谷は6年連続でベスト10に入っているが、このうち4年間は1ケタ本塁打。いかに出塁能力に優れているかがわかる。
ベスト10圏外の注目選手では規定打席に届かなかった阿部慎之助(読売)を挙げる。この年は.242の低打率からすると意外に高い.370の出塁率を記録。これにより長打力の衰えをカバーし、.349とまずまずのwOBAを記録している。ここまで捕手として高い打撃成績を収めることによりチームに大きなアドバンテージをもたらしてきた阿部が、捕手としてよりも一塁手としての出場の方が多い、初めてのシーズンとなった。
(※1)wRAA:リーグ平均レベル(0)の打者が同じ打席をこなした場合に比べ、その打者がどれだけチームの得点を増やしたかを推定する指標。優れた成績で多くの打席をこなすことで値は大きくなる。
(※2)勝利換算:得点の単位で表されているwRAAをセイバーメトリクスの手法で勝利の単位に換算したもの。1勝に必要な得点数は、10×√(両チームのイニングあたりの得点)で求められる。
(※3)wOBA(weighted On-Base Average):1打席あたりの打撃貢献を総合的に評価する指標。
(※4)平均比:リーグ平均に比べwOBAがどれだけ優れているか、比で表したもの。
DELTA・道作
DELTA(@Deltagraphs)http://deltagraphs.co.jp/
2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える デルタ・ベースボール・リポート1~3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『1.02 Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』(https://1point02.jp/)も運営する。