柳田悠岐の時代が継続。山川穂高も台頭 セイバーメトリクスの視点で過去の打撃ベスト10を振り返ろう ~2017年編~
2021/01/08
DELTA・道作
2017年のセ・リーグ
チーム 試合 勝率 得点 失点 得失点
広島 143 .633 736 540 196
阪神 143 .561 589 528 61
DeNA 143 .529 597 598 -1
読売 143 .514 536 504 32
中日 143 .428 487 623 -136
ヤクルト 143 .319 473 653 -180
優勝した広島の中心を担った丸佳浩がリーグ首位となった。39.4を記録したwRAA以外でトップになった指標はなかったが、全般的に優秀なスタッツを揃えた。丸は出塁率を伸ばすこと、特に四球の獲得数を伸ばすことにより順位を上げてきた打者である。この年も.398と高い出塁率を記録した。
また同じ広島の鈴木誠也がwOBA.402でリーグトップになっている。ただ出場が115と欠場が多く、打席が多いほど有利になる積み上げ式の指標であるwRAAでは丸に届いていない。2位の筒香嘉智(DeNA)は前年より成績を落とした感はあるが、打撃スタッツで大きく悪化したのは打率、本塁打、打点の打撃3部門に限られている。そのためwRAAによる丸との差はわずか2点少々。地力のあるところを見せた。
5位のアレックス・ゲレーロ(中日)は35本で初の本塁打王。長打率は.563でリーグ首位となり、.333と低い出塁率をカバーしたかたちである。6位となったホセ・ロペス(DeNA)は105打点で打点王を獲得したほか、171本で最多安打を記録。長打型の打撃スタイルからイメージしにくいものだったので、ロペスの最多安打は逆に印象深く映っている。8位の田中広輔(広島)は.398で最高出塁率を獲得。中軸以外のチャンスメーカーがこのような記録を残していることからも、広島のチーム力の高さがうかがえる。最後に9位の宮﨑敏郎(DeNA)が打率.323で首位打者を獲得。ここまで獲得タイトルが選手ごとにばらついているのは珍しい。ランキングも波乱含みで、ベスト10で見ると非常に面白い年であった。
ベスト10圏外の注目選手は、規定打席未到達の選手の中で光る打撃を見せた広島の松山竜平。規定には59打席ほど不足したが、打率.326は両リーグの首位打者よりも高く、出塁率(.375)、長打率(.534)ともに優秀で、wOBAはトップ3人に迫る.390を記録した。結果、強力な打者を並べた広島が攻撃力で圧倒し736得点を記録。得点2位のDeNAを139点引き離す歴史的な傑出を見せ、200点に迫る得失点差を記録した。10ゲーム差をつけての優勝は必然であったのかもしれない。
(※1)wRAA:リーグ平均レベル(0)の打者が同じ打席をこなした場合に比べ、その打者がどれだけチームの得点を増やしたかを推定する指標。優れた成績で多くの打席をこなすことで値は大きくなる。
(※2)勝利換算:得点の単位で表されているwRAAをセイバーメトリクスの手法で勝利の単位に換算したもの。1勝に必要な得点数は、10×√(両チームのイニングあたりの得点)で求められる。
(※3)wOBA(weighted On-Base Average):1打席あたりの打撃貢献を総合的に評価する指標。
(※4)平均比:リーグ平均に比べwOBAがどれだけ優れているか、比で表したもの。
DELTA・道作
DELTA(@Deltagraphs)http://deltagraphs.co.jp/
2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える デルタ・ベースボール・リポート1~3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『1.02 Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』(https://1point02.jp/)も運営する。