遊撃・坂本勇人が40発。強打の捕手・森友哉がMVPを獲得 セイバーメトリクスの視点で過去の打撃ベスト10を振り返ろう ~2019年編~
2021/01/17
Getty Images, DELTA・道作
2019年のパ・リーグ
チーム 試合 勝率 得点 失点 得失点
西武 143 .563 756 695 61
ソフトバンク 143 .551 582 564 18
楽天 143 .511 614 578 36
ロッテ 143 .496 642 611 31
日本ハム 143 .471 560 586 -26
オリックス 143 .449 544 637 -93
2019年のパ・リーグは、オリックスの主砲・吉田正尚がwRAA44.0で首位となった。特に突出した項目はなかったが、出塁率.413、長打率.543が規定打席到達打者の中でともに2番手。フル出場によって610打席と機会が多かったことも、出場機会が多いほど有利になるwRAAが高い要因となっている。
2位には捕手の森友哉(西武)がランクインしている。打率.329、長打率.547が規定打席到達打者の中でリーグトップ。1打席あたりの得点貢献を示すwOBA(※3)も.412トップであることから、この年打席に迎えたときに最も恐ろしい打者はこの森であったことになる。しかしわずか8試合の欠場が響き、吉田正にwRAAわずか0.002の僅差で2位に終わっている。昨今のNPBでは、捕手に守備時の責任と負担が集まりその代償として強打者が生まれにくくなっている。こういった状況で捕手が攻撃による利得を生み出すことができれば影響力は大きい。森の存在はプロ野球チーム編成の趨勢にアンチテーゼを唱えているように見える。
3位ジャバリ・ブラッシュ(楽天)と4位の山川穂高(西武)は共に長打力と四球獲得が武器で、ともに.250を少し上回る程度の打率のわりに出塁率は高い。山川は43本で本塁打王を獲得。ブラッシュは個性的なフォームが話題を呼んだが、彼のようなヒジを張った打撃の構えは1980年代以前の外国人長距離打者に多かった。
7位中村剛也(西武)は123打点で打点王を獲得。8位の近藤健介(日本ハム)は出塁率.422で最高出塁率となった。過去3年累計の出塁率は.448に達しているが、2019年までのパ・リーグ70年間の最高出塁率でこれを超えたのは13例しかない。出塁のスペシャリストとして歴史に残るスタッツを残している。前年まで4年連続1位の柳田悠岐(ソフトバンク)は負傷により大半を欠場。思わぬかたちで連続記録に終止符を打った。
ベスト10圏外での注目打者はジュリスベル・グラシアル(ソフトバンク)。410打席と規定未到達ながら、長打率は規定打席到達打者トップの森を4分8厘も上回る.595を記録した。なおグラシアルは規定不足分の33打席をすべて凡退しても森の長打率を上回るため、規定により最高長打率打者となっている。wOBAも.407と2位に相当する好成績であった。
なお、近年は四球数の上位選手がかなり高い数字を記録しているうえ、その四球数も似通っている。これは特定の条件に当てはまる打者が有利になっていることにより生まれている現象ではないかと推測している。例えば、2018年パ・リーグの四球数ランキングは2位山川を除き、6位まで全員が左打者だった。一般的には右打者の打撃成績のほうが優れているのにである。左打者の四球が多いということは、左打者に対しストライクがとられにくいストライクゾーンの運用が行われていると想像する。筆者としては、近年中にストライクゾーン運用の変更を検討すべき時期が迫っていると考えている。