レジェンド級打者へ。弱冠20歳の村上宗隆がトップに セイバーメトリクスの視点で過去の打撃ベスト10を振り返ろう ~2020年編~
2021/01/20
DELTA・道作
2020年のパ・リーグ
チーム 試合 勝率 得点 失点 得失点
ソフトバンク 120 .635 531 389 142
ロッテ 120 .513 461 479 -18
西武 120 .500 479 543 -64
楽天 120 .491 557 522 35
日本ハム 120 .461 493 528 -35
オリックス 120 .398 442 502 -60
負傷から復活し、シーズンを通して出場した柳田悠岐(ソフトバンク)がまたしても圧倒的なwRAA58.5をマーク。5回目の首位となった。打撃三冠には縁がなかったため目立たないが、wRAAのほかにも1打席あたりの得点貢献を表すwOBA(※3).453、長打率.623でリーグをリードしている。過去、打撃3部門が無冠となった打者で最高の数値は2002年のペタジーニの61.2だが、この時の試合数は140試合であった。2020年が120試合制で行われたことを考慮すると、この年の柳田は史上最高の無冠の帝王と呼べるかもしれない。また柳田の最高長打率は5回目だが、これはパ・リーグでは中西太に並ぶ歴代最多となっている。
ちなみに柳田のwRAAが最も良かったシーズン5年を合計すると、値は298.3となる。この合計値はNPB史上で王貞治・長嶋茂雄・落合博満・松井秀喜に次ぐ5番手の数字となっている。ちなみに落合・松井とは僅差であるため、この部門でONに次ぐ歴代3位の座が現実味を帯びてきた。2021年終了時点で3位となる可能性も十二分にありそうだ。
2位には近年wRAAが高止まりしている浅村栄斗(楽天)がランクイン。32本で本塁打王を獲得した。かつてはどちらかというと出塁力に問題を抱えていたが、この年は自身初となる4割超えの出塁率も記録。打者としての弱みが消えた印象だ。前年ランキング首位の吉田正尚(オリックス)は、打率.350で首位打者を獲得して3位に入っている。
4位と5位には近藤健介・西川遥輝の日本ハム勢がランクイン。このうち近藤は出塁率.465で最高出塁率を獲得している。2015年から4年間最高出塁率と最高長打率を独占した柳田が完調のシーズンだっただけに、近藤がこのタイトルを獲得した意義は深い。同じく日本ハムからは前半戦好調で108打点で打点王を獲得した中田翔が9位に。10位山川穂高は打率.205ながら、出塁率を.357まで伸ばしたことがランキング入りに効いた。この低打率でのランク入りは前例はあるものの、かなりのレアケースである。
ベスト10圏外の注目選手には楽天の茂木栄五郎を挙げる。2020年の楽天はステフェン・ロメロも加入し優れた長打力を見せると予想していた。そんな中、茂木は出塁型の打撃成績でチームに貢献。楽天は長打率.401だけでなく、出塁率.341でもリーグ1位となり、NPBで最多の557得点を記録した。茂木は規定打席に不足していたものの、wRAAは16.7を記録。8位のコーリー・スパンジェンバーグ(西武)の14.3を上回っている。
柳田がリーグ全体を圧倒する構図の中で、2021年以後にほかの打者に巻き返しがあるのか注目である。