巨人・増田大輝の「神走塁」にこそ走塁の基本が詰まっている。川相昌弘が語る今のプロ野球に求められる走塁技術
頭を整理して、グラウンドで戦え!実践と復習の繰り返しで、ワンプレー、1打席の濃さは明らかに変わる。犠打バント世界記録を持ち、ゴールデングラブ賞を6回受賞、指導者として中日ドラゴンズ、読売ジャイアンツで多くの選手を育ててきた川相昌弘が技術論、指導論を体系化した『ベースボールインテリジェンス』(川相昌弘著)が好評発売中!本書より一部を公開します!
2021/02/03
本塁は、低く遠くに滑る
私の現役時代に比べると、走塁に求められる技術が変わってきたと感じる。
近年、もっとも大きな変化をもたらしたのが、2016年の「コリジョンルール」の導入である。本塁上でのブロックが禁止され、キャッチャーは三塁ランナーの走路を必ず空けなければいけないことになった。必然的に、本塁の前で送球を捕らざるをえない。さらに、「リクエスト制度」が取り入れられたことで、タイミングがアウトであっても、手や足が少しでも先にベースに触れていればセーフになる。ジャッジがひっくり返る場面を、いくつも目にするようになった。
データを取っているわけではないが、本塁上でのタッチプレーがセーフになる確率はかなり高くなっているのではないだろうか。走者三塁から内野ゴロで突っ込む「ゴロゴー」も、走者二塁からヒット1本で突っ込んでくる場合も、走路が空いている分だけ、走者に
有利に働くことが増えている。
コリジョンルールの導入以降、特に教えていたことが、「本塁は、低く遠くに滑りなさい」ということだ。「低く」は足ではなく手でタッチする意味であり、「遠く」はキャッチャーからもっとも遠いベースの一点に触れることだ。ホームベースの前側(フェアゾーン側)ではなく、後ろ側(ファウルゾーン側)を狙う。送球が大きく逸れたときや、タッチプレーに慣れていないピッチャーがホームベースに入った場合は、足から行ったほうがよいこともあるが、やはり基本は「低く遠く」だ。まさに、この走塁を体現したのが巨人の増田だ。