巨人・増田大輝の「神走塁」にこそ走塁の基本が詰まっている。川相昌弘が語る今のプロ野球に求められる走塁技術
頭を整理して、グラウンドで戦え!実践と復習の繰り返しで、ワンプレー、1打席の濃さは明らかに変わる。犠打バント世界記録を持ち、ゴールデングラブ賞を6回受賞、指導者として中日ドラゴンズ、読売ジャイアンツで多くの選手を育ててきた川相昌弘が技術論、指導論を体系化した『ベースボールインテリジェンス』(川相昌弘著)が好評発売中!本書より一部を公開します!
2021/02/03
セオリーの徹底がビッグプレーを生んだ
2020年7月19日、横浜スタジアムで行われたDeNAとの一戦。1点を追う巨人は、9回表2アウト二塁と、一打同点のチャンスを作った。二塁には、その直後に二盗を決めた増田がいた。打席には丸佳浩。1ボール2ストライクと追い込まれた状況から、インコースのストレートを引っ張り一、二塁間へ。ライトに抜けそうな当たりを、セカンドの柴田竜拓がダイビングキャッチで好捕した。二塁ランナーの判断が迷うところだが、増田は躊躇なくホームに突入すると、頭から滑り込み、左手でホームベースの角をタッチした。「神走塁」とも呼ばれたビッグプレーだった。
増田は、柴田の送球が左バッターボックス側に逸れたのを見て、瞬時にもっとも遠いところにタッチをしたはずだ。もし、ストライク送球だったらどうなったかはわからないが、「低く遠くに」というベースタッチの考えは変わらない。足から滑り込んでいたら、アウトになっていただろう。
試合後には、「2アウト、2ストライクだったので、ストライクゾーンに入った瞬間にスタートを切った」という増田のコメントも出ていた。セオリー通りではあるが、隠れたファインプレーだ。ストライクを振らなければ、見逃し三振で3アウトチェンジ(試合終了)。ランナーが走っていようと、プレーには関係ない。だから、2アウト、2ストライクの状況では、ストライクゾーンだとわかればスタートを切っていい。特に、二塁ランナーは投球の軌道が見えやすいだけに、絶対にやってほしいことである。