巨人・増田大輝の「神走塁」にこそ走塁の基本が詰まっている。川相昌弘が語る今のプロ野球に求められる走塁技術
頭を整理して、グラウンドで戦え!実践と復習の繰り返しで、ワンプレー、1打席の濃さは明らかに変わる。犠打バント世界記録を持ち、ゴールデングラブ賞を6回受賞、指導者として中日ドラゴンズ、読売ジャイアンツで多くの選手を育ててきた川相昌弘が技術論、指導論を体系化した『ベースボールインテリジェンス』(川相昌弘著)が好評発売中!本書より一部を公開します!
2021/02/03
次打者にも大きな役割あり
ホームのクロスプレーは足で滑っても、頭から滑っても、最後は手でホームベースを払う。間一髪のクロスプレーのときは、これがベストな選択ではないだろうか。特に、ライト側に打球が飛んだ場合は、絶対に手でタッチしたほうがセーフになる確率が上がる。ホームベースを基準にしたとき、キャッチャーは右側から送球を受け、ランナーは左側の角に滑り込んでくるわけで、捕球からタッチまでの距離がもっとも遠くなる。そう考えると、スクイズやセーフティスクイズなども、一塁側に転がしたほうがセーフになる可能性が高くなるだろう。「ゴロゴー」のギャンブルスタートも、セカンドゴロやファーストゴロのほうがセーフになりやすいと言える。
ホームに突っ込むときに、忘れてはならないのがネクストサークルにいる次打者の役割である。三塁と本塁を結んだラインの近くに立ち、ホームコーチャーの役目を果たす。右中間寄りのセンターやライトからの返球であれば、ランナーも自分の目で少しは確認できるのだが、これがレフトからの返球になると、ランナーは見ることができない。返球が三塁側に逸れた場合には、ホームベースの一塁側を目掛けて滑りにいくことになる。そのまま三塁側に突っ込んだら、わざわざタッチされにいくようなものだ。三塁ランナーの視界に入って、大きなジェスチャーで指示を出したい。
ホームコーチャーの役割はもうひとつ。三塁ランナーの走路に置きっぱなしのキャッチャーマスクやバットをどけることだ。「障害物」があることで、ランナーはスピードを落としたり、スライディングを躊躇したりすることになるのだ。昔は、わざと置いていたキャッチャーもいる。気が利いた球審は、手でマスクを拾い上げたり、ときには足でマスクを蹴飛ばしたりするのだが、状況的にそれができない場合もあるので、ホームコーチャーはさまざまな状況を想定したうえで準備をしておきたい。ネクストサークルで、自分のことだけ考えて素振りをしていては反応が遅れてしまうだろう。
書籍情報
【現役選手、指導者へ贈る野球 IQ 向上メソッド】
ベースボールインテリジェンス 実践と復習の反復で「頭を整理する」
(著者:川相昌弘(元読売ジャイアンツ、中日ドラゴンズ)/四六判/272頁/定価1700 円+税)2020年12月7日発売
【本人による実技写真解説】
通算犠打数533は世界記録。ゴールデングラブ賞6回受賞。プロ野球人生で書き綴ったノートを基に、技術論・指導論を体系化。平凡な私がプロで生き残れた理由がこの本に詰まっている。
「頭を整理して、グラウンドで戦えるか」。
教わったこと学んだことをイチ早く吸収していくには、一度言われたことをしっかりと覚えておかなければいけない。漠然と練習をしているだけでは、技術も上がらなければ、戦術の理解度も上がっていかない。ひとつひとつのプレーや動きに、どれだけ根拠を持つことができるか。良かったことも悪かったことも自分の言葉で説明できるようにならなければ、本当の意味で理解したとは言えない。理解がなければ、上達にはつながっていかない。
本書は、心/守備(基本)/守備(連携)/バント/打撃/走塁の6つの構成から成る。いずれも、野球ノートに記してきた技術論や精神論をもとに、各分野を極めるためのポイントを詳細に記した。
【目次】
第1章 心の持ち方
第2章 守備(基礎)編
第3章 守備(連携)編
第4章 犠打編
第5章 打撃編
第6章 走塁編
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「BASEBALL INTELLIGENCE ベースボールインテリジェンス 実践
と復習の反復で「頭を整理する」」
川相昌弘(かわい・まさひろ)
1964年9月27日、岡山県出身。岡山南高では投手としてチームをけん引、甲子園に春夏計2回出場した。1982年のドラフト会議で読売ジャイアンツから4位指名を受け、内野手として入団した。選手層の厚いチームにおいて、守備力とバントで存在感を示すと、藤田元司氏が監督に就任した1989年に、レギュラーを奪取。以降、ジャイアンツの2番・ショートとして中軸のつなぎ役として活躍した。2004年から巨人でも一緒にプレーした落合博満監督率いる中日ドラゴンズへ移籍、新天地でも貴重な戦力として重宝された。2006年に現役引退後は中日・巨人のコーチを歴任。現在は野球解説者を務めている。