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環境悪化によりゴロ打ちが有効になる時代に セイバーメトリクスの視点で過去の打撃ベスト10を振り返ろう ~1943-44年編~

2021/02/11

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Getty Images, DELTA・道作



1943年のNPB

チーム 試合 勝率 得点 失点 得失点
巨人   84 .667 263 169  94
名古屋  84 .623 217 172  45
阪神   84 .532 225 221  4
朝日   84 .532 232 185  47
西鉄   84 .513 276 236  40
大和   84 .449 203 263  -60
阪急   84 .378 175 257  -82
南海   84 .317 178 266  -88
 

 
 この年も巨人が優勝で、1938年秋からシーズン6連覇となった。54勝27敗、勝率.667と圧倒的な優勝に見えるが、これでも直近6シーズンの中では最悪の勝率である。前5シーズンは307勝112敗で勝率は.733だった。現代のセイバーメトリクスの研究では、最低限のコストで獲得できるレベルの選手だけで構成されたチームの勝率は、3割程度になると想定されている。この前5シーズンにおいて、巨人と対戦したチームの勝率はこの3割を下回った。球団間の戦力差は、今では考えられないほどに大きかったようだ。リーグ平均打率は前年に続き1割台の.196。藤本英雄(巨人)によってNPB史上最も優秀な防御率0.73が記録されたのもこのシーズンである。

 このシーズンの1位は呉波から改名した呉昌征(巨人)。wRAAだけでなく、出塁率、長打率、1打席あたりの得点貢献を表すwOBA(※3)で他選手を圧倒した。打率は唯一の3割台で首位打者となったほか、盗塁は2位の54個を記録しながら失敗はわずかに5と、走塁も含めた総合的な攻撃力で、優勝を左右するほど影響力を発揮した。四球も85でリーグ最多だったため、出塁率はこの投高打低時代としては考えられない.457に上っている。
 
 2位の山田伝(阪急)は各項目で呉に続く数値をマークしたほか、56盗塁で盗塁王を獲得している。3位以下の打率、本塁打だけを見てもかなり打者に厳しいシーズンであったことが明らかだと思われる。
 
 5位の野口明(西鉄)は42打点で、22位の青田昇(巨人)と打点王を分け合った。青田は0本塁打での打点王となったが、これは試合数が極端に少ない1944年を除けばNPB史上唯一の記録である。本塁打王は古川清蔵、岩本章、加藤正二の名古屋勢3人が4本で分けあう形となったが、規定打席に達したのはこのうち古川1人だけ。その古川も長打率は2割台でwRAAランキングでは15位に留まっている。通常であればwRAAランキングの行方に大きな影響を与える本塁打数も、ここまで少なくなればさして大きなインパクトを与えられないこと、打席数が少なくとも本塁打王のチャンスはあることを示している。「3人並びのタイ記録」も「規定未満の本塁打王」も打席が少ないほど起きやすい事態である。
 

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