セイバーメトリクスの視点で見るNPB歴代最強打者ランキング ~4位-6位~
2021/02/24
Getty Images, DELTA・道作
5位 山内一弘(1952-1970年)
wRAA通算:634.5 ベスト5シーズン:6位 ベスト10シーズン:4位
5位は毎日、阪神などでプレーした山内一弘となった。これについては意外と感じた読者も多いのではないだろうか。1950-1957年のエクスパンション(球団数拡張)期の影響により数字はやや過大に出ている(※2)とはいえ、これほどの実績のわりに地味な存在である。後世に語り伝えられるような逸話やライバル関係などの物語に恵まれず、また出塁率など打撃三冠以外の数字が優れていたことがその理由になるのかもしれない。新聞などのメディアで報じられるクラシックな打撃成績と、近年開発された打撃指標との間で評価に大きな乖離が生まれる選手は、どの時代にも一定数存在する。
なお、山内が全盛期を迎える1954-1960年頃は、リーグの盟主となることをもくろみプロ野球参入を果たしていた毎日が、熱意を失い最終的に撤退した時期と重なる。客観的に見れば山内はメディアを親会社とする強豪チームの若きスラッガーである。参入当初の熱量のままに事が運んでいれば、山内をスターとして前面に立てて行くシナリオもありえた。しかし、諸般の事情からそれは実現しなかった。使えたはずのメディア戦略の恩恵にあずかれなかった不運な選手でもある。
守備面ではRelative Range Factorという守備指標で見た場合、現役前半から中盤にかけては水準以上の外野守備力を示していたことがわかる。1962年は1年間不動の中堅手を務めた。それに加えこの打撃成績であるため、オールタイムのオールスターを選出するような企画では有力候補になってもおかしくないはずだが、なぜかなかなか候補にはあがらない。現役時代のリーグ優勝はわずか2回で、いずれも日本シリーズ敗退。通算ベスト10入りした選手の中で、現役時代に日本シリーズ制覇を経験していないのは、この山内と門田博光の2人だけである。