セイバーメトリクスの視点で見るNPB歴代最強打者ランキング ~31位-40位~
2021/03/08
DELTA・道作
現役の糸井嘉男がここでランクイン。もし野手としてプロ入りしていれば……
37位は現役選手の糸井嘉男。2003年に投手としてプロ入りしたが、3年目の2006年に野手に転向。大卒の上に回り道をしているため、レギュラー獲得は2009年(28歳)と芽が出るまでに時間がかかった。そこからこれだけの記録を積み重ねている。四球・二塁打など打撃三冠以外の部分に強みがある打者で、打撃三冠では首位打者1回のみだが、最高出塁率3回、最多塁打1回を記録している。盗塁王も獲得するなど基礎的な運動能力が高いのは明らかで、プロ入り時点から野手だった場合のキャリアをつい夢想してしまう選手である。
38位の飯田徳治は戦後、南海や国鉄で活躍した選手である。四球や二塁打が多い上、盗塁王を経験している点で37位の糸井と似ている。ただし、1957年の盗塁王はNPB史上唯一の専業一塁手によるもの。1948-1955年の8年間はすべてwRAAランキングが10位以内で、2位を2回、3位を1回記録している。地味な実力者といった様子だが、1947-1956年の最強時代の南海においては最も長打のある打者として走者を還す役割を担い、打点王を2度獲得している。
39位の与那嶺要は主に1950年代に活躍した読売・中日の選手。プレースタイルはイチローの先祖のような選手であったが、肩が弱点という点が異なっていた。26歳でハワイから来日と同時に豪打を見せ、実働わずか12年にもかかわらずランキング入りとなった。特に1954-1957年頃が全盛期で、4年間のうち3回wRAAでリーグ1位となっている。首位打者、最高出塁率ともに3回、最多塁打を2回経験するなど、短い期間ではあったがセ・リーグを代表する打者であった。
40位には1970年代後半からロッテで活躍したレロン・リー。リー兄弟の兄の方である。1977年の来日から2年間、リーグ首位のwRAAをマークした後も良好なスタッツを継続。わずか在籍11年でのランクインとなった。来日時は長打力が目立ったものの、予想外に打率が高く、引退時には.320で4000打数以上の最高通算打率であった。ただし現在ではMLB帰りの青木宣親がトップに立っている。
リーは、1966年のMLBドラフトではカージナルスのドラフト1巡目・全体7番目で指名された。アメリカでも早い段階から高い評価を得ていた選手である。1972年にパドレスで3割、12本塁打を記録した頃までは、日本で活躍する未来は考えてもいなかっただろう。ちなみにドラフト1位の同期には大打者レジー・ジャクソンがいる。またのちに広島などでプレーするジム・ライトルもヤンキースにドラフト1位で指名されていた。
(※2)Relative Range Factor: 9イニングあたりの刺殺・補殺の数によって野手の守備力を評価するRange Factorを発展させた指標。一般的な野球の記録から算出することができるため、過去の野手の守備を評価する際に用いられることが多い。
DELTA・道作
DELTA(@Deltagraphs)http://deltagraphs.co.jp/
2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える デルタ・ベースボール・リポート1~3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『1.02 Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』(https://1point02.jp/)も運営する。