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セイバーメトリクスの視点で見るNPB歴代最強打者ランキング ~41位-50位~

2021/03/11

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DELTA・道作



イチローは実質キャリア7年でランクイン。MLBに移籍しなければ歴代2位?

 47位にはついにイチローが登場。日本でのキャリアはわずか9年。しかも最初の2年はwRAAでマイナスを記録しているため、実質わずか7シーズンでこのランキングに入ってきた。

 イチローがもしMLBに移籍せず、NPBに残っていた場合を仮定してみよう。MLBで規定打席に達した年数と同じだけNPBでキャリアを送り、NPB時代の7年間の平均のwRAAをその間マークしつづけたと仮定すると、通算wRAAは張本勲を上回り、王貞治に次ぐ2位となる。ちなみにイチローのNPB終盤は欠場がかさんだ結果、wRAAが伸び悩んでいる。よってこの予想はかなり控えめなものだと考えられる。
 
 マーリンズでプレーした2015年には打率.229と低調に終わり、MLBでの3000本安打に届かず引退することも頭をよぎった。しかし、翌年に盛り返して大台をクリアしている。ちなみに現在米野球殿堂入り投票は、薬物関連の問題で有力選手が殿堂入りとならず、候補者の大渋滞が起こっている。イチローが米野球殿堂入りの資格を得るのは2025年。このタイミングは有力選手が資格を失う時期にあたる。不利な条件が消えた上に、3000本安打の大台をクリアしていることは、初年度殿堂入りのために非常に重要な条件ではないかと考える。
 
 48位には西武黄金時代を支えた秋山幸二が入った。スピードとパワーを兼ね備えた基礎的な運動能力の高さはレギュラー初年度あたりから広く知られていた。レギュラー確保当初の2年ほどは主に三塁手としての出場だったが、1970年代ごろから三塁守備は以前ほど守備的に重要なポジションとみなされなくなっていた。こうした背景を受けてか秋山もより重要と認知されていた中堅へコンバート。以後は知られたとおり歴史的名手として鳴らした。最高長打率を1度記録するなど長打力に大きな強みがあったが、一貫して出塁率に難があり、総合指標wRAAで見た場合、意外に数字は伸びていない。本塁打王と盗塁王の獲得経験がある珍しい選手で、これは2リーグ時代では山田哲人が現れるまで唯一の記録であった。
 
 49位は現役の青木宣親。2020年終了時点で4000打数以上での最高打率.325をマークしている。首位打者3回、最高出塁率2回と優秀なリードオフタイプだが、長打率5割超えのシーズンも4回記録している。MLBでのキャリア6年間をはさんでいるためNPBでのプレーはまだ11年だが、それでもランクインしてくるのはこの長打力も一因である。年間wRAA2位が2回、3位が1回ある。
 
 50位は小久保裕紀がランクイン。一貫して出塁能力よりも長打力に秀でた成績を残し続けたキャリアであった。本塁打王1回、打点王1回、長打率1位が2回。wRAAリーグ首位こそなかったが、長期間に渉り良好な数値を積み上げ、大卒ながら400本塁打・2000本安打のマイルストーンをクリアしている。レギュラーとなった当初は二塁手で、ゴールデングラブ賞にも選ばれており、1995年にはこの賞と本塁打王を同時獲得した二塁手という史上唯一の記録を打ち立てている。
 
 以上でトップから50人の選手を紹介してきたが、以下にも長い歴史を現すように魅力的な選手が続く。
 
 一例として60-62位の3人がアレックス・ラミレス、筒香嘉智、ランディ・バースの並びになっていることに注目したい。ラミレスは2000年代に打撃タイトルを次々と獲得し、外国人選手として初の2000本安打を放った打者である。日本でのキャリアは13年と外国人選手としては異例の長さ。にもかかわらず60位とそれほどランキングは高くなく、一般的なイメージからするとギャップがある読者もおられるのではないだろうか。
 
 一方、筒香、バースはNPBでのキャリアがそれぞれわずか10年、6年と短い。にもかかわらずラミレスとほぼ同等のスコアを記録している。筒香についてはこれからピークを迎えようかというタイミングでNPBから移籍。さらにほとんど実績のない若手時代も含まれての10年である。ラミレスと筒香・バースには出塁能力に大きな差があり、それがキャリアの長さの差を埋める主要因となっている。セイバーメトリクスの視点で見ることで一般的な評価とのギャップを感じやすい並びではないだろうか。
 
 もちろん2021年以後もプロ野球は続くわけで、このランキングも毎年変わっていく。20年後に私が生きていればどのようなものに変わっているのか、興味はつきないところである。
 
DELTA・道作
 
DELTA@Deltagraphshttp://deltagraphs.co.jp/
 2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える デルタ・ベースボール・リポート1~3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『1.02 Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』(https://1point02.jp/)も運営する。
 

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