「選手の価値評価が球団利益に」BOSシステム開発の背景【前日本ハム球団社長・藤井純一氏#6】
現在、日本のプロ野球界で実に効率的なチーム作りをしているのが北海道日本ハムファイターズである。東京から北海道へ移り、地域密着に成功した球団の土台を築いた一人が藤井純一前球団社長だ。これまでの藤井氏の話を聞くと、「負けない」ファイターズ、「集客力のある」ファイターズの土壌が見えてくる。
2015/08/23
球団によるサラリーキャップ
北海道日本ハムファイターズの選手が入れ替わりながら、継続的に結果を出しているのはベースボール・オペレーション・システム(BOC)によるところが多い。
このBOCの開発投資はかなりの金額だった。チームの統轄本部長だった吉村浩からBOCに関する稟議書が上がってきたとき、藤井は躊躇しなかったという。選手の価値を正当に評価することが長期的に球団の利益になると信じていたからだ。
BOCにより、ファイターズは選手の適正な年俸を割り出している。
「ダルビッシュ(有)については最後は5億円ぐらいまで払っていたでしょ? ぼくらは幾らぐらいまでだったら払えるという話をしていました。そうしたらだいたい七億まで行けると。ただ、彼に7億出せば、上乗せの2億分を他の選手から削る。そういうやり方でした」
藤井は吉村と話し合い、まず選手全員の年俸総額を決めた。後はそれをいかに割り振るか、である。
いわば、球団によるサラリーキャップだ。
「シーズン終わりになると、来年、誰と誰を切って、次にこういう選手を獲りますという方針があがってきます。外国人枠で何人獲るとか」
そのため、エージェントによる年俸つり上げの交渉には応じない。
「価格と価値が釣り合っていればいいんです。高くなるんならば出してしまえ、というのが基本的な考えです。うちに来て結果を残したから、よその球団に高く売るなんてことはありましたね」
とはいえ、現場を仕切る監督は貪欲だ。万が一に備えて多くの選手を欲しがる。
そのため、ファイターズの場合は選手の獲得にまで権限を持つ〝全権監督〟は認めていない。監督はチーム統轄本部が集めた選手の中でシーズンを戦うことを要求されるのだ。
「だから、最下位になってもクビにしていないでしょ。このメンバーでどれだけの結果が残せるかというのもある。3位でも上等というシーズンもあるでしょうし」