6戦6勝、忘れられた存在から救世主へ 「燕のサブマリン」山中、努力でつかんだ自らの『居場所』【野球コラム 新・燕軍戦記#10】
まさに破竹の勢いだ。東京ヤクルトスワローズの山中浩史が8月11日の広島戦(マツダ)でプロ初完封をマークし、これで今季は無敵の6戦6勝。昨年までプロ通算0勝の「燕のサブマリン」がエース級の働きを見せるまでになったのは、彼自身のひたむきな努力のたまものと言っていい。
2015/08/12
プロ初勝利から始まった破竹の快進撃
ソフトバンクのルーキーだった2013年以来、2年ぶりに上がる一軍の先発マウンド。6回3失点で、西武先発の牧田和久との「アンダースロー対決」を見事に制し、29歳9カ月でうれしいプロ初勝利。ここから山中の快進撃が始まる。
登録と抹消を繰り返しながら、7月2日阪神戦(神宮)、15日中日戦(ナゴヤドーム)、そして26日の中日戦(神宮)に勝って4戦4勝。こうなると、もうローテーションから外す理由はなくなる。
初めて中6日で先発した8月2日の阪神戦(甲子園)では、その時点で自己最長の7回を無失点に抑え、これで5戦5勝。スワローズの球団史上でも、前身の国鉄時代の1958年に金田正一が9戦9勝して以来のことと、大きな話題となった。
その直後、山中は元ロッテの渡辺俊介(現米独立リーグ、ランカスター)から連絡をもらったという。実は山中が熊本・必由館高2年の時に、それまでのサイドスローからアンダースローに変えた際、モデルにしたのが当時プロに入ったばかりの渡辺。自身がプロ入りしてからは、自主トレをともにすることもあった。
「『もっとバッターを観察できるようになったら、ピッチングが本当に面白くなるよ』って言われました。僕はまだまだその域に達していないですけど、そういう余裕を持ってバッターを見ることができたら、もっといいピッチングができるかなと思います」
その山中を「そのままですよ。昔からあんな感じで…まじめですね」と評すのは、九州東海大4年の時に、1年の山中と同部屋だったというヤクルトの松岡健一である。
「成績を残しているのはうれしいですね。やっぱり年取って(プロに)入ってきてるから、自分にプレッシャーを掛けながらずっとやってるのも見てるし、何でも一生懸命やるじゃないですか? キャンプでも、足が遅いのに最後まで頑張って長距離を走ってる姿勢とかも、けっこう認められてますから。本当に頑張ってる感じがしますね」
たとえ結果が出なくても、ひたむきに努力を続けてつかんだ居場所。一時はヤクルトファンからも忘れられた存在になりつつあったのが、いつしかチームの救世主となり、今やエース級の活躍である。それもすべては、彼自身のひたむきな努力のたまものと言っていい。
6月の今季初登板から、ここまで山中が常に歩んでいるVロード。その道のりは、そのままスワローズにとって14年ぶりの優勝へとつながっていくのだろうか?