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加藤貴之、楽しみな成長過程――「安定した先発投手」の姿に変貌【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#146】

投手陣のやりくりに腐心するチームにおいて、加藤貴之が先発で安定した働きを見せている。ここ数年起用法は定まらなかったが、今季は先発で大化けする可能性を秘めている。

2021/05/02

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便利使いな起用法からの脱却

 
 今年の加藤は風格がある。ズバッと打者の内懐を突いて見逃し三振。球のキレが素晴らしい。ビジター解説者氏じゃないけど、「こんなにいい投手でしたっけ?」だ。昔の記憶では打線が何巡かするといきなりつかまり出す、そして一発病に泣く印象だが、今季は違う。勝てるピッチングなのだ。俺たちはなぜこんないい先発を便利使いしていたのか?
 
 今年の加藤のピッチングを見ていると、「加藤はデータ上、打者一巡までは抑える傾向にある」のでショートスターターに適任、という前提について検討を加えたくなる。今季は長いイニングでも好投してるのだ。まぁ、加藤だけでなく金子弌大にも同じ傾向がある。ショートスターター&便利使いをやめたら、しっかり先発で投げるようになった。もしかして起用法を間違えていたのか。単に個々の投手の調整法(先発には先発の体調管理、調整法があるというような)の問題なのか。
 
 僕はクローザーが最初、違和感のある投手起用だったように、投手分業制は常に新しいな可能性が探られるべきだと思った。オープナー、ショートスターターは単に「試合あたまのクローザー」じゃないか。もし、加藤に適性があり、それを日本球界で最初に成し遂げたら大変な栄誉だ。球界に名を残す存在になる。ぜひチャレンジして、成功させてほしいと願っていた。それが間違いだったのか?
 
 今季、加藤がキャンプからどんなアプローチでピッチングを仕上げていったか、チャンスがあれば訊いてみたい。僕の見たところ、去年と今年の加藤には技術的なジャンプがあるのだ。通常、「打者一巡までは抑える傾向にある」投手は少しずつ長いイニングを投げさせてもらって、ひと回り大きく「成長」するイメージだ。一巡目、二巡目、三巡目と攻め方を変え、ピンチの場面ではギアを上げ、あるいはマッチアップした相手投手との駆け引き(先に点をやらない、失点したらガマンするetc)することを覚えるイメージだ。ファンは実戦を通し、そういう「成長」過程を楽しむのだ。
 
 が、加藤貴之にはそれがなかった。ここ2年ほど中途半端な起用が続き、一足飛びに今季の「安定した先発投手」の姿に変貌した。過程が見えない。元々、これができる投手に、やれショートスターターだイニングイーターだと、やらせていたのだったら、大変な間違いをしでかしていたことになる。

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