【データで選出3・4月月間MVP】ロッテ・マーティンと巨人・坂本勇人がトップの貢献。中日・柳裕也はダルビッシュ並のペースで三振を量産
2021/05/10
Getty Images, DELTA
柳は打者3人に1人が三振。山本は多くのイニングを投げることでチームに貢献
投手の評価も質と量両面でどれだけ貢献したかから求める。質は「奪三振」、「与四死球」、「被本塁打」、「ゴロかフライかライナーかといった打たれた打球の種別」、量は「投球回」によって決まり、そこから平均的な投手と比較しどれだけ多くの失点を防いだかを算出する。
投手ではパ・リーグは山本由伸(オリックス)、セ・リーグでは柳裕也(中日)がそれぞれ8.4点、6.9点と最高の貢献を残した。
柳で注目したいのは奪三振能力だ。柳は平均が20%程度となるK%(奪三振/打者)で32.2%と、ほぼ3人に1人のペースで三振を奪った。MLB移籍前最後のシーズンとなった2011年のダルビッシュ有(当時日本ハム)でもシーズンのK%は31.2%だった。柳は3・4月の期間限定とはいえ、当時のダルビッシュ並のペースで三振を量産していたようだ。そしてこの奪三振の多さが失点抑止につながっている。
その柳をさらに上回る45.0%を記録しているのがドラフト1位の新人・栗林良吏だ。栗林は救援投手であるため、1イニングに集中して全力投球ができる。先発の柳より三振を奪いやすい状況にあると言える。とはいえ45.0%という数字は圧倒的だ。約半数から三振を奪うとなると、当然打球が発生すること自体が非常に少なくなる。打球が発生しなければ失点のリスクが小さくなるのは想像できるだろう。
また、ほかの指標で注目したいのは与四球の割合を表すBB%(与四球/打者)だ。大瀬良大地(広島)はNPB平均が10%程度になるBB%で2.6%を記録した。76人の打者と対戦し、わずか2つしか四球を与えていない。奪三振の面では平均レベルにとどまったが、無駄な走者を出さないことで失点を防いでいたようだ。ほかには新人の早川隆久(楽天)も与四球の面で優れた成績を残していたようだ。
最後に、山本はあらゆる面で優れた投球を見せていたが、投球の質に注目すると最も優秀だった指標はない。ただ、山本はほかの先発投手に比べ1試合多い6試合に先発している。さらに1試合あたりの平均投球回も7回を越えるなど長い投球回を投げることができていた。これにより山本はほかの投手に比べて多い45回1/3を消化。十分な質を保ちながらも、多くの投球回をこなす「量」の面でほかの投手にかなりの差をつけていたようだ。
DELTA(@Deltagraphs)http://deltagraphs.co.jp/
2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える デルタ・ベースボール・リポート1~3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『1.02 Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』(https://1point02.jp/)も運営する。