「特別な1勝」伊藤大海が歩む未来――北海道のファイターズの歴史を継ぐ男【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#148】
伊藤大海が本拠地で初勝利を飾った。自分で考え、工夫ができ、向上心と探求心を持ち合わせる道産子ドラ1ルーキーのこれからは、間違いなく明るい。
2021/05/29
えのきどいちろう
苦難のなかでも研究は怠らず
伊藤大海は自分で考え、工夫し、トライしていける選手だ。大学在籍時も自ら研究して、投手としての能力を向上させた。僕は今年のオープン戦、伊藤大海が「各打者、4球以内」と自ら課題を設定して投げていたのに仰天した。4球以内に結果球。そんなテーマでオープン戦に挑む新人がいるだろうか。頭がいい。だけでなく向上心、探求心がある。
ご存知のようにシーズンに入ってから彼は受難の日々を過ごす。勝てる試合を味方のエラーでフイにする。勝利投手の権利を手にしながらリリーフが打たれて不首尾に終わる。直近の登板ではKOも食らった。新人王争いのライバル、早川や宮城と比べて勝ち星が伸びない。が、その苦難のなかでも研究は怠らなかった。
28日の中日1回戦で伊藤大海は投球タイミングを微妙に変えていた。これまでの投球とは明らかに違う。フォームのタメの作り方にバリエーションがある。2段モーションっぽく、左足を上げて一拍タメて投げるかと思うと、スーッと踏み込んで投げてみたり、打者はタイミングが取りづらかったと思う。僕はこういうところはハッキリ伊藤の長所だと思う。例えば「変化球工夫マニア」だったダルビッシュを思い出してみよう。良い選手は常に工夫している。自前で考えている。
沢村賞投手・大野雄大と投げ合って「北海道1勝」を手にしたことは、大いなる一歩だ。この先のことはヒーローインタビューで、自分の言葉で語っている。「伊藤大海」が始まっていく、その一歩なのだ。僕は札幌ドームでその第一歩に付き合ったファンに嫉妬する。コロナ禍で緊急事態宣言が発出されるなか、東京から北海道へは動けない。だけど、GAORAの画面のこちら側ではバンザイしてたんだよ。
おめでとう、伊藤大海投手。これから長い物語を僕らファンも生きてゆく。