能力はダル級 『泰然自若』高卒新人史上20人目、完封勝利の高橋光成は獅子の希望【中島大輔 One~この1回をクローズアップ】
ライオンズ期待の新人、高橋光成が23日のロッテ戦に先発。高卒ルーキーとしては史上20人目の完封勝利をあげた。今回は高橋らしさが出た、この試合の9回表1イニングをクローズアップしたい。
2015/08/24
最後までペースを崩さず、初完封
「緊張はあったんですけど、マウンドに入ったらすんなり緊張も解けて入れたので。すごく大事な試合だと思うので、自分でも気持ちを引き締めていきました。でもプレッシャーを感じずに、すごくいい感じでゲームに入れました。それがよかった点かなと思います」
試合後にそう振り返った高橋は、実際、初回から自身のペースで飛ばしていた。ストレートを待っている相手打線を力でねじ伏せつつ、フォークでタイミングを外していく。7回くらいから疲労の色をのぞかせたものの、スコアボードにゼロを並べた。
そして迎えた9回1死、角中に嫌な四球を与えたのだ。さらに高濱卓也にライト前安打を打たれ、1死1、2塁のピンチを迎える。
だが、2013年夏の甲子園で前橋育英を初出場初優勝に導いた男は、ここでも自分のリズムを崩さなかった。
「ストライクが入らなくなったけど、ファンの皆さんが後押ししてくれたので、1球1球気持ちを引き締めて投げることができました」
ルイス・クルーズには143kmのストレートが真ん中に入ったものの、力で押し切ってライトフライ。快挙まで残りひとりの土壇場で、ロッテは最後のカードを切ってきた。前日までの2試合で9打数5安打と絶好調のベテラン、福浦和也だ。
しかし、それでも高橋はマイペースを貫いた。
「ベテランということで、いろいろ経験されている方です。でも、どうこう考えても新人の自分は何もわからないので、本当に思い切りキャッチャーのミットを目掛けて投げました」
初球からフォークと145kmのストレートで追い込み、3球目のフォークがファウルとなる。そして4球目、外角に147kmのストレートを投げ込み、セカンドゴロに打ち取ってみせた。
「思い切り投げたことが、完封につながったと思います」
屈託のない笑みを見せた18歳はこの日、最初から最後までマイペースだった。
荒々しさも武器
そんな高橋が「自分らしさ」として振り返ったのが、試合後の囲み取材で制球について聞かれたときだ。与四球が8月9日のオリックス戦では5個、16日のソフトバンク戦では4個あったが、この日はふたつに収めた。その要因について聞かれると、高橋はこう答えている。
「でも、荒々しさも自分の武器だと思っているので。それを失わずにしっかりとまとめられたので、今日は良かったと思います」
群馬県北部にある沼田市の出身で、高橋はずっとマイペースに育ってきた。前橋育英の荒井直樹監督は、「割とのんびりというか、田舎の子という感じです」と話していたことがある。
潮崎2軍監督が言うように、純朴な性格はいわゆる「プロ向き」とは言えない。しかし、そうした不安を凌駕するほどの泰然自若と、打者を圧倒するほどの荒々しい球を備えている。
6月中旬、潮崎2軍監督はこんな話をしていた。
「夏くらいに1軍定着できれば、いいんじゃない? 順調に行っての話だからね。能力的には、いまの先発ピッチャーより上の部分をすべてにおいて兼ね備えているから」
首脳陣やファンから大きな期待を背負う黄金ルーキーは、クライマックスシリーズ進出を懸けた今季終盤戦、西武の鍵を握るひとりとなっている。