仙台育英の活躍も刺激 プロ初本塁打が満塁弾の上林、恩師から学んだ『Next one』
ソフトバンクの2年目外野手・上林誠知が25日の千葉ロッテ戦、第1打席でプロ初安打を記録すると、第3打席ではイデウンから逆転満塁本塁打を放った。このプロ初ホームランは、チームを4連勝に導き、マジックを23に減らす一発となった。
2015/08/26
母校で誓った目標
1年秋から4番を打ち、2年夏に甲子園の土を踏んだ。同年秋には明治神宮大会で優勝し、春夏連続甲子園に出場。高校日本代表にも入った。
2年秋の東北大会では準決勝で3ラン、決勝では試合を決める2ラン。明治神宮大会では満塁本塁打をかっ飛ばした。3年夏の宮城大会決勝は、初回に5点を失う苦しい試合だったが、8回に1点差に迫るソロ本塁打を放った。これが勝利の呼び水となり、チームはサヨナラ押し出しで24回目の甲子園出場を決めた。必要な場面で必要なアーチを描いてきた“持っている男”だ。
その反面、甲子園と日本代表は絶不調。後に上林は「あれで鼻が高くならずに済んだ。最後の最後に悪いようでいいプレゼントがありましたよ、神様から」と話していた。注目を浴びる中、結果を出せなかったことで、誰よりもうまくなりたいという気持ちを強くした。
良い時こそ、謙虚に
昨季は内野手として主に3軍で鍛えられた。
オフに仙台育英を訪れた時、「ウエスタン・リーグでタイトルを獲る」と目標を書いた。それは今、監督室の柱にかけられている。1月の自主トレを内川、今宮らと行い、今季は本来の外野手に戻って2軍で安打を重ねてきた。ウエスタン・リーグでは、打率.333で首位打者だ。そんな中、8月14日の“親子ゲーム”で1軍首脳陣が見ている前で放った本塁打がアピールとなり、21日、今季2度目の1軍昇格を果たした。
一見、寡黙で大人びて見られるが、冗談を言って笑っている時は、20歳らしさを感じさせる。根は真面目で、この日のような結果に対して、逆に気を引き締めるタイプである。
仙台育英高では良い時こそ、「謙虚に」と教わってきた。そんな母校を今でも気にかけており、今夏の甲子園は、準々決勝と決勝をスタンドから応援。学校で行われた準優勝報告会にも顔を出し、後輩たちから刺激を受けた。
上林の高校時代の恩師である、仙台育英高・佐々木監督は以前、こんなことを話していた。
「過去で一番いい打撃はどこでした? と聞かれて、『Next one』と言えるようになってほしい」
喜劇王チャールズ・チャップリンは、「あなたの最高傑作は何ですか?」と聞かれた時、『Next one(次回作)』と答えたという。それになぞらえたエールだ。
8・25。上林がプロとして、本当のスタートを切った。
現状に満足することなく、『Next one』を積み重ねていくはずだ。