エース格に成長しつつある伊藤大海の長所。研鑽と研究で培ったセルフコントロール術【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#151】
ロッテ期待の星・佐々木朗希との投げ合いに勝った日本ハムの伊藤大海。五輪代表にも選出された期待のニューヒーローは、もはやファイターズのエース格へと育ちつつある。
2021/07/11
球種が豊富で、かつどれも一級品
この日の伊藤は(巨人・菅野に代わって)五輪代表に選ばれた、そのお披露目のようなマウンドだった。最後に追加招集されたので「ラストサムライ」と見出しを打った新聞もある。スライダーにフォーク、チェンジアップ、もちろんストレート、すべての球種がカウント球になり、決め球にもなる。中継(日テレNEWS24)の解説者、GG佐藤氏も名前を挙げていたが、楽天の則本昂大っぽい。持ち球が豊富(かつ高品質!)で的を絞らせないのだ。三振が取れるところも共通している。
7回121球投げて被安打1、与四球3、失点0、7奪三振。好調ロッテ打線を完全に封じてしまった。マッチアップした佐々木朗希が走者を出してはバランスを崩し、5回4失点の不完全燃焼に終わったのと対照的だ。
僕は楽天・則本でなく、中日・ロッテで活躍された牛島和彦氏のことを考えながらこの日の中継を見た。先ほど、伊藤の球種を「スライダーにフォーク、チェンジアップ、ストレート」と書いたけれど、実際にはもっと変幻自在なのだ。中継アナは「4種類のスライダー」と紹介してくれた。軌道の異なる4種類のスライダーは確かに伊藤のセールスポイントだ。が、何か画面を見ていて、4種類じゃない感じがしたのだ。で、パッと連想したのが牛島さんだ。
牛島さんは確かラジオ番組で話されてたんだと思うが、現役時代、「身長に恵まれなかった」(177センチ。ちなみに伊藤大海は176センチ)から、色々工夫して投げたそうだ。面白いなぁと思ったのは球種を増やす工夫だ。さっき「4種類のスライダー」という話をしたが、牛島さんが言われるにはそれはもっと増やせるらしい。例えば指をひとつ縫い目にかけるかかけないか、球の握りを浅くするとどうか等で、同じ球種が微妙に変わってくる。昔の言い方で「まっスラ」というのがあった。少しボールの持つ位置をずらしてフツーにストレートを投げると、まっすぐのようなスライダーのような軌道になる。ま、現在の言い方ならカットボールだ。そういう風に「持ち球は同じでも球種は増やせる」らしい。
そういう工夫してるんじゃないかなー、と思いながら伊藤大海の投球を見ていた。伊藤はセルフコントロールが優れている。もちろんフツーの言い方で「コントロールのいい投手」でもある(特にアウトコース!)けれど、どんな状況にも動じず、最善の「自分の技術」を出していこうとするのだ。そのセルフコントロール術。ついに6連勝で今季7勝目だ。もはやファイターズのエース格になってきた。