ライナー性の打球で本塁打量産の山田哲人 その勢いはどこまで続くか?【広尾晃の「ネタになる記録ばなし」】
ブログ「野球の記録で話したい」を運営中で『プロ野球解説者を解説する』(イーストプレス刊)の著者でもある広尾晃氏。当WEBサイトでは、MLBとNPBの記録をテーマに、週2回、野球ファンがいつもと違う視点で野球を楽しめるコラムを提供していく。今回は、セリーグ本塁打王争いを独走し、トリプルスリーも射程圏内になっているヤクルトの山田哲人についてだ。
2015/08/26
ミート中心の打撃を意識
山田はインタビューに対し「とにかくスイングスピードを速くしたい」と語っている。この言葉から、中村のようにボールをバットに乗せて遠くに運ぶのではなく、速いスイングで打球にラインドライブをかける山田の打法が見えてくる。
飛距離を中村と比較する。
同じ右打者の中村も左翼スタンドに本塁打を打っているが、中村の打球が110mから120mに集中しているのに対し、山田はフェンスぎりぎりの本塁打から125m超の大型本塁打まで、さまざまな飛距離の本塁打を打っている。“感性で打っている”という印象を裏付けられる。
三振は中村の142に対し、山田は84。長距離打者の中村と、ミート中心の山田の特性の違いがくっきりと表れている。
平均飛距離では山田は中村には及ばない。しかしこの数字は小さな数字ではない。
公式戦の全本塁打の飛距離が残されているONのライフタイムでの本塁打の平均飛距離は、王貞治が108.7m(868本塁打)、長嶋茂雄は106.0m(444本塁打)。
両翼が10m広くなり、MLBのスタジアムとほぼ同じサイズになった現代のNPBでは100m以下の本塁打は実質上無くなった。
山田は、昭和の代打者よりも確実に遠くに飛ばしているのだ。
異色のスラッガーとして、山田はどこまで数字を伸ばすだろうか。