チーム過渡期の中で逆転Vを目指す巨人・原監督――『黙して語らず』の理由
巨人が苦しんでいる。しかし、苦しみながらも稀代の名将はさまざまなやり繰りをしながら、しぶとくV争いに絡んでいる。
2015/08/30
野球人は結果が全て
常に重圧のかかる読売巨人軍の指揮官として原監督は今季で通算12シーズン目を迎えた。通算在位で言えば、前人未到のV9を達成した故・川上哲治氏の14シーズンに次いで2番目の記録である。第14、16代監督を歴任した昨季までの通算11シーズンで日本一3度、リーグ優勝も7度達成した。しかも2009年の第2回WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)では日本代表監督として侍ジャパンを連覇へと導き、同年12月の世界野球連盟総会で世界最優秀監督にも選出されている。これだけの経歴と数々の栄光を誇る原監督は文句なしで「希代の名将」と呼ばれるにふさわしい。
だが、そんな希代の名将であっても今季はなかなか思い通りのプランニングができていないのが現状のようだ。それは「混セ」にあえぎながら、そこから抜け出すことができないチーム状態にも反映されている。
普通のチームであれば世代交代を図らなければならない時、若手を積極的に抜擢するなどして数年先のシーズンを見据えた起用や采配を行えば、それでいいかもしれない。ところが巨人では、そうもいかない。常にリーグV、そして日本一を求められ、毎日のように結果が求められ続ける。とにかく「負け」が許されないのだ。
こういう特殊な環境下において世代交代の波にさいなまれながらもVを狙うと同時に将来のことを考えて戦力の入れ替えも図る。まさに至難の業であるが、これは裏を返せば経験豊富な原監督でなければ成せることではないだろう。
「いろいろ言っても始まらない。男は黙ってやらなければいけないんですよ。野球人は結果が全てですから。私が何か動いたことで結果が良ければ賞賛されるし、悪ければ批判される。それはこの世界を生きていく中で覚悟の上です」
これはかつて原監督が第2回WBCで侍ジャパンの指揮を執った際、報道陣に語った言葉だ。黙々と〝乱セ〟を戦っている希代の名将のラストスパートに注目したい。