“もうやばいな”…成田翔、7年目の覚悟。かつての金言「球速じゃないぞ」が開花の鍵に【#20】
2022/03/03
千葉ロッテマリーンズ
“打ち取り方はいろいろ他にもあるんだな”
そんな成田は、入団時から大きく投球フォームを変えている。2019年以降はサイドスローである。サイド転向後もマイナーチェンジを繰り返し模索を続けてきたが、今年は特に手応えを感じているようだ。その理由の一つに、木村龍治投手コーチ、そして石川雅規投手(東京ヤクルトスワローズ)の言葉がある。
石川と言えば、成田にとっては秋田商の大先輩だ。小柄な左腕という共通点もある。いまなお現役で活躍を続ける姿は、プロ生活の指針となっている。
「(昨年から)大きく変えた点は、今キャンプ中(※1)なんですけど、木村さんといろいろ話をして、『サイドだったら球速じゃないぞ』ということを言われて。2、3年目にヤクルトの石川さんにも同じことを言われていたんですけど、それを改めて気づかされた」
成田は数年越しに、石川のアドバイスを“受け取った”。メディアは「アドバイス受け即結果!」などと書き立てるし、実際そのように書きたい気持ちもわかるが、掛けられた言葉というのは、得てして消化するのに時間がかかるものだ。シンプルな言葉であれば尚更である。
言葉の意味を咀嚼して、血肉とするには、その言葉を深く理解するための“体験”が必要である。同じ言葉でも、立っているステージによって見え方が変わる。成田は紆余曲折を経て、ようやく石川の言葉の真意に辿り着いた。“当時の成田”ではなく、“いまの成田”に必要な栄養となった。
「木村さんと石川さんに言われて改めて気づいたことは、おそらく球速じゃないということなので、それが今はこの間の試合から上手く出来ているというか、“打ち取り方はいろいろ他にもあるんだな”っていうことに気づいて、(それが試合で)出来ていると思います」
『球速じゃない』という言葉は、成田にとっては「打ち取り方はいろいろ他にもあるんだな」だったのである。そりゃそうだろと思う読者もいるかもしれないが、ストンと身体に落ちる、腑に落ちるときというのは、頭で理解する以上に感覚的なことなのだ。それを自分の言葉にできた時、小手先の理解では到達し得ない“武器”となる。
「自分は去年からシュートに手応えを感じていて、シュートとスライダーで横の動きで、高ささえ間違わなければゴロアウトも増えますし、そのスタイルが今はこの2試合(※2)は出来ているので、継続していきたいなと思います」
(※1)2月22日取材時点
(※2)2月17日の巨人戦、2月20日のヤクルト戦(ともに1回無失点)。その後2月23日、3月2日(ともにオリックス戦)でも1回を無失点に抑えた。