キューバ戦勝利に見えた侍Jの進化。アメリカでの十分戦えるチームに【小宮山悟の眼】
WBC第5戦、日本はキューバに8-5と逆転勝利。これで5連勝となったが、チーム全体を野球評論家・小宮山悟氏はどう評価するのか。また、アメリカ行きが濃厚となったが、この先の戦いをどう展望するのか?
2017/03/15
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勝負のポイントは小林への代打。正しかったのか?
侍Jがキューバに競り勝ち第1次Rからの連勝を5に伸ばした。
昨日の試合では、本気のキューバ、崖っぷちになった時のキューバの強さを垣間見た試合になった。昔ほどの強さはないとはいえ、追い込まれるとあれだけの力を発揮する怖さを感じた。
だが、昨日の侍Jはその上をいった。小久保監督になった侍Jの試合ではベストゲームと言っていいのではないか。ミスが1つもなかったことが一番評価できる。苦しい戦いの中で肝を冷やす試合展開にもかかわらず、相手に付け入るスキを与えなかった。余裕をもって見ることができる試合運びは見事だった。
試合のポイントは、8回裏、2安打と好調の小林誠司(巨人)に代打・内川聖一(ソフトバンク)を送った場面だ。今大会のラッキーボーイである小林に代打を送るのは勇気がいるが、客観的に見て小林よりも内川の打撃の方がはるかにレベルは高い。
あの場面ではタイムリーを打つことと同時に、外野フライで点を取るということも頭に入れなければならない。両面を考えればその能力に長けたバッティングができるのは、内川以外にいないだろう。小久保監督に迷いはなかったはずだ。また、緊張感のある場面で仕事を果たした内川は高く評価できる。
先発した菅野智之(巨人)は調子が悪いわけではなかった。いいボールを投げているけれども、ジャッジとの相性が合っていなかった。その中で菅野が降板してからの勝利だけに価値が高い。1試合ごとにチーム力が上がっている印象を受ける。
打線は山田が復調し、思い切りよく振れていた。ここからさらに打ってくれるという期待感を持っていいだろう。一方、青木が少し悩んでいるようだ。おそらく、青木自身が必要以上に背負い込んでしまっているように思う。連覇した時のイチローと自身を重ねてしまっているのかもしれない。
チームで唯一のメジャーリーガーだからハードルが高くなっている。チャンスの打席に立った時に結果を求められるというところで、力んでいる印象がある。ただ、2009年のイチローにしても、決勝戦のセンター前ヒットが打つまでは苦しんでいた。青木も本当にココというところで一本を出すくらいの気持ちでいい。それだけで十分に取り返せる。