佐々木朗希が「特別な日」に捧げたウイニングボール。侍ジャパンに襲い掛かったチェコの“粘り”【WBC2023コラム】
2023/03/12
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栗山監督も感服したチェコのハッスルプレー
栗山監督は「3試合ともそうですが、国際大会の難しさというか、じりじりした試合展開だった。勝ち切れたけれど、改めて難しさを感じた試合だったなと思います」と試合を振り返った上で、先発の佐々木について「一球一球魂を込めて、目一杯投げている朗希の姿がベンチでもすごく感じられた。スピードとかボールとかそういうことよりも、彼もいろんなことを感じながら、ボールを投げるというよりも思いを届けているようにも見えました」と、震災の被災者遺族でもある若き右腕を称えた。
また、勝てば1次ラウンド1位突破が決まる12日のオーストラリア戦については、「(先発は)山本由伸投手でいきます。適応性のあるピッチャーなので、大事なゲームでも、自分の力を発揮してくれると思います」と期待を込めた。
対戦相手のチェコについても言及。「野球を続けるには大変な環境の中、仕事もしながらという話も聞いています。その中で『野球が好きだ』という思いを感じましたし、我々もそういう思いでやらなくてはと思いました。非常に心地良いというか、みんな一生懸命で気持ちのいい礼儀正しいチーム。野球をやっていく中で、忘れちゃいけない気持ちを胸に刻みながらやらなくてはと思いました」と賛辞を送り、自身も初心に帰ったようだ。
結果として、底力の差を見せつけられたチェコ代表だが、佐々木の160キロ超えのストレートにも難なく対応する打撃を見せ、特に守備の堅さはこのチームの特長でもあり、ファインプレーも披露し、連携も抜群で、序盤は侍ジャパンを大いに苦しめた。
佐々木の162キロの速球が左ヒザに直撃し、しばらく動けなかったエスカラは、立ち上がると一塁ベース付近から右翼線沿いを力強い全力疾走を見せ回復をアピールし、場内からは大歓声が挙がるほどのハッスルプレー。一塁を守る山川が謝罪すると、爽やかな笑顔で返した。
3回に大谷から三球三振を奪ったサトリアは、そのボールを記念に持って帰ったという。国内リーグで今シーズン、最多の14本塁打と最多奪三振(139)と“チェコ版二刀流”の顔を持つ右腕にとって、大谷は憧れの存在なのだろう。
これで1勝1敗となったが、残り試合は3つ。まだまだ下を向く必要はない。この試合は本国チェコでも生中継され、この試合の放送が、チェコの歴史上初の野球中継だという。現地土曜昼に放送されたこの試合をテレビを通じ、超満員の東京ドームで我が国のエースが“世界の大谷”から三振を奪う姿を目にし、野球に興味を抱いた子どもが一人でも増えれば、チェコにおける野球の普及や次世代育成という意味では大きな1ページを記したといっていいだろう。
【了】