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大谷翔平、待望のWBC初アーチ 準々決勝は盟友のいる“大穴”との戦い【WBC2023コラム】

2023/03/13

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オーストラリアの実力はこんなものではない

 この日のオーストラリアは、先発シェリフの大乱調もあり、自滅といっていい苦しい試合となってしまったが、真の実力はこんなものではないはずだ。
 
 この日も、最終回に一発を放ち意地を見せたように、長打力を持ち合わせる打線と、コールド負けを回避させた中継ぎ投手陣の踏ん張るには、目を見張るものがあった。
 
 そして、13日のチェコ戦に勝てば、韓国との直線対決を制していることから初の1次ラウンド突破と準々決勝進出が決まる。オーストラリアの野球界は着実に、その実力を高めているのだ。
 
 しかしながら、オーストラリアでは野球はまだまだマイナースポーツの域を出ない。ラグビーやクリケット、オージーボール(オーストラリアン・フットボール)やサッカーに人気が集まり、競技人口も少なく、2010年に発足したオーストラリアのプロ野球リーグ「オーストラリアン・ベースボールリーグ」には、2リーグ6チームが加盟しているものの、野球だけでは十分な報酬を得られるとはいえず、国内リーグでプレーする選手の大半は他に仕事を持つ「兼業選手」だ。
 

 
 それでも逆に考えてみれば、プロリーグ発足からわずか13年で、世界のベスト8に手が届いたことは特筆すべき大躍進といえるだろう。そして、この快挙が本国で報じられることによって、国民が野球に関心を持ち、競技人口の増加や競技力の向上に繋がっていけば、いずれ、日本をも脅かす存在にもなり得る伸びしろがあるのだ。
 
 一方で、オーストラリアは日本と季節が逆になるため、日本プロ野球のオフである11月~1月にかけて試合が行われることから、日本から若手が武者修行として参加するケースも多い。そんな選手の中には、ソフトバンクの今宮や福田、中村晃、元西武の菊池(現ブルージェイズ)、先に引退した前日本ハムの杉谷、元巨人の亀井のように、後にブレークを果たした選手も多い。
 
 加えて、ABL(オーストラリア野球リーグ)主導の下、日本人を主体とした新チームを参入させる構想を打ち出し、NPB側と調整をめている。日本側でチーム結成などが順調に進めば、オーストラリアで拠点のホームタウンを決め、2023年11月開幕のシーズンから本格参入する。日本の若手選手にとっては経験を積み、実力をアピールする舞台になり、現地の選手にとっても生きた見本となる。ABLにとっては日本市場の開拓が魅力だ。
 
 そうした交流が、日本の若手だけではなく、オーストラリア本国でプレーする選手の刺激になっていることは間違いない。
 
 そして近い将来、侍ジャパンにとって、成長したオーストラリアが“強敵”として立ちはだかる日も、そう遠くないのかも知れない。

【了】

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