大谷翔平選手をはじめとした日本人メジャーリーガーを中心にメジャーリーグ・日本プロ野球はもちろん、社会人・大学・高校野球まで幅広いカテゴリーの情報を、多角的な視点で発信する野球専門メディアです。世界的に注目されている情報を数多く発信しています。ベースボールチャンネル



大谷翔平、見納めの“リアル二刀流”で躍動! 全勝での世界一に向け決勝ラウンドへ【WBC2023コラム】

2023/03/17

text By

photo

Getty Images



5番“降格”に村上が燃えた!目覚めた三冠王が二塁打2本

 その裏も続投したパランテは相変わらず制球が定まらず、先頭の大谷をストレートの四球で歩かせると、続く吉田には死球を与え、ここで、マウンドをニットーリに譲る。迎える打者はこの試合で5番に降格した村上だ。若き三冠王がここで目覚め、ニットーリの初球148キロの直球をセンターオーバーの二塁打を放つ、続く岡本もライトオーバーの二塁打でつなぎ、一気に3点を奪い5点差と突き放す。
 
 6回から登板した今永は、MAX154キロのストレートで押すピッチングを見せ、2三振を奪い、イタリア打線を沈黙させる。
 
 そして7回、日本のマウンドに上がったのはダルビッシュだ。針の穴を通す制球力で、デルジオを見逃し三振に切って取ると、デビット・フレッチャーを三ゴロ、フレリックを遊ゴロに抑え、反撃のきっかけすら与えない。
 

 
 日本も、6回から登板したイタリアの5番手、速球派左腕マルシアーノに対し、7回先頭の吉田が“打った瞬間”の右翼席中段への特大弾で6点差とすると、覚醒した村上が左翼への二塁打、岡本を申告敬遠で歩かせたところで、イタリアのマウンドはフェスタにスイッチ。牧の右邪飛の間に村上が三進すると、負傷を押して、この大一番に先発した源田が中前タイムリーで起用に応えてみせ、7点差とした。
 
 8回もマウンドに上がったダルビッシュは、イタリアの今大会初本塁打となる一発をドミニク・フレッチャーから浴び、続くサリバンにも右前打を許すが、パスカンティーノを遊ゴロでダブルプレーに打ち取り、流れを渡さない老練な投球を日本のファンに披露した。
 
 9回は、侍ジャパンの守護神として期待されている大勢が登板。2本のヒットを許したが、最後は154キロで三振斬り、無失点で試合を締め、6点差のままゲームセット。
 
 終わってみれば、投打がかみ合った侍ジャパンの完勝といっていい試合だった。この結果を受け、準決勝進出を決めた侍ジャパンは、米アリゾナで開催された第1ラウンドC組で米国を猛打で圧倒し1位突破したメキシコと、直近2大会の決勝で敗れ、悲願の初優勝を目指すプエルトリコの勝者と決勝進出をかけて戦うことになる。
 
 試合後、栗山監督はまず「なかなか野球ファンの皆さんが球場に来られない時期は続きましたけれども、(球場の歓声を聞いて)本当に野球が戻ってきたな、と感謝しています」と連日、超満員にスタンドを埋め、声援を送ったファンに感謝し、続けてイタリアに対し、「最終的には少し点が離れましたが、日本の素晴らしいピッチャーが投げても、しっかりバットの芯に当てるので、試合展開がどうなるのか分からなかった。運良く勝たせてもらいました」と与えた。
 
 また、ナインについて「なかなか感じられないぐらい、選手は緊張していました。『日本の素晴らしい野球を見せるんだ』という緊張感は、僕も感じたものがありました。(投手陣は)日本の誇るピッチャー全員を突っ込んでいこうという中だった。あまり人前でそういう話はしませんが、今日に関しては、ファンの皆さんにも届いていたと思います。(大谷)翔平があれだけ一球一球、声を出しながら投げていて『なんとかしたいなんとかしたい』というのを感じさせていた。その思いは僕だけではなく、全員に伝わっていました」と緊張感の中で戦っていたことを明かした。
 
 マイアミで行われる準決勝へ向けては「最初にチームを作った時に言ったように、“僕が”ということではなくて。日本の大先輩方、野球を作ってくださった方の思いを持ちながら戦いたいと思います。野球が発展するためには、米国に行って米国でやっている選手たちに勝たなければ前に進まないとずっと思っていた。ぜひ勝ちきれるように頑張っていきます」と力を込めた。
 
 続けて、記者会見場に姿を見せた大谷は、「4回ぐらいまでは確実にいきたいという感じでしたし、ダルビッシュさんはじめ他の素晴らしい投手が控えていたので行けるところまでは行ければと思っていた。最後の2個の死球が余計だったなっていう感じですかね」と投球を振り返り、セーフティーバントについては「極端な守備シフトだったので、理想はもうちょっと強めに確実に一、二塁を作るバントが良かったんですけど、結果的に(相手のエラーで)一、三塁になったので狙いとしては良かったと思います」と語り、その上で「あのシチュエーションも無理に引っ張った打球がゲッツーになるのが一番最悪なシナリオなので、リスクを回避しながら、なおかつハイリターンが望めるチョイスをしたつもり。結果的に一番いい形でビッグイニングをつくれたのは良かった」と振り返った。
 
 シーズンとは違うトーナメント戦に関しては「(高校野球以来)久々の短期決戦というか、短いスパンでの試合は、最近、あまり経験していなかったですし、独特の緊張感など、自分の中で特別なものがあったかなと。あと2試合、気を引き締めて頑張りたい」と、早くも決勝戦を見据えるコメントを発した。

1 2 3 4 5


error: Content is protected !!