侍J、2次Rの鍵握る田中広輔の“足”。十二分に示した“1番ショート”の存在感
ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)第3戦、日本は中国に7-1と快勝した。2次Rに向けて大きな存在感を放ったのが1番ショートで先発した田中広輔だ。打って、走って侍Jのチャンスを演出。機動力の重要性を見せつけた。
2017/03/11
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田中が見せつけた積極走塁。原点は苦労したアマ時代にあり
たったひとりで先制点を奪った。
10日の1次R最終戦の中国戦。「1番ショート」で今大会初スタメンに抜擢された田中広輔(広島)がその存在感をたっぷりと見せつけた。
1回裏、カウント1-2と追い込まれながらも中前安打で出塁すると、盗塁にも成功。これが悪送球を誘い、1死3塁の好機を作る。3番・山田哲人(ヤクルト)の右翼への打球はかなり浅い飛球となったが、それでも田中はタッチアップして先制のホームを踏んだ。
「最初はストップかなと思ったんですけど、相手の捕球態勢が良くなかったから、積極的に狙いました。いい仕事ができたと思います」
職人気質のする田中は少ない言葉の中に強い意志を見せて語った。田中がこうした境地に達した転換期は社会人時代にある。東海大相模高校時代からプロ入りを期待された選手だったが、東海大へ進学。大卒プロは叶わず、大きく花開いたのはJR東日本での4年目だった。田中はこのとき、野球観が変わったと語っている。
「バッティングは打っても3割なので、それ以外に何ができるかを考えていますね。打つこと以外に、フォアボールで出ることもできますし、守備や走塁でもできることがあるので、そちらの方を意識しています」
プロに入ってからはその意識にさらに磨きがかかる。田中をアマチュア時代から知る担当スカウトの尾形佳典の言葉がそれを裏付ける。
「バッティングでは、今ほどの積極的なイメージはないが、走塁はとにかく積極的。大事な試合の終盤でも、ランナーに出て、1球目から盗塁を決めることができる選手でした。負けず嫌いで、芯が強い。菅野とプロで対決して『あいつだけには負けたくない』と言っている記事を読みましたけど、そういうのを平気で言ってしまうタイプ」
侍Jへは中島卓也(日本ハム)の代役として代表入り。「自分の役割は分かっている」と、たとえ出場機会が少なくても、自身のパフォーマンスが出せる準備だけはしてきた。「それをやってきたからの結果」と中国戦を振り返っている。